体験を通して歴史を知る
ゲームが終わるとプレーヤーは集合し、主催者が謎解きをする。だが、プレーヤーたちはすでに正解にはあまり興味を持っておらず、出会った人物の話で盛り上がる。このゲームでは、キャラクターとの対話や参加者同士の討論、そして知らなかった桃園の歴史や建物に触れることこそ本当の収穫なのである。このゲームを通して、参加者たちにとって桃園景福宮一帯は馴染みのあるエリアとなり、かつて東門渓によって育まれた水と共生する街であったことを理解する。そして、この都市の開発と変化を知り、「都市は絶えず再開発されていくが、私たちが求めるのはどんな風景なのか?」と考えさせるのである。
「どのキャラクターが気に入りましたか?」と聚楽邦を設立した呉亜軒が聞く。その話によると、流しのおばあさんには実在のモデルがいるそうだ。
もう一人の創設メンバー林志育によると、毎回地元の歴史文化研究団体と協力し、彼らの記録を用いて議論を重ね、ゲームを作り上げていくのだという。着実なフィールドワークで集めた資料は、文字として記録できるだけでなく、実際に体験することでより深く理解できると考えている。ゲームの中でプレーヤーは特定の行動を求められ、これによって日頃は見落としがちな場に目を向けることとなる。
「少し違う方法でテーマを語りたいと思ったのです」と呉亜軒は当初の起業理念を語る。堅苦しいテーマに興味を持ってもらい、馴染みのある環境の中に未知の物語を見出してほしいと思ったそうだ。起業から3年、多くの機関が「体感型学習」に興味を持ち、聚楽邦と協力してさまざまなゲームを作っている。「次のテーマは?」と聞くと、二人はそろって「たくさんあります」と答える。仕事場の壁に「Our city, our duty」と書いてある通り、台湾の都市で発生した物語に二人は情熱を注いでいる。
桃園東門渓は鎮撫宮一帯の文化と歴史を育んできた。この地域は水と共生してきたのである。