スマートマシンで効率向上
黄博士が言うスマート農業システムとは、農業委員会が推進する「スマート農業4.0計画」の一環を成すものだ。スマート農業というのは、IoTやビッグデータ、スマートマシン、デバイスなどを導入し、生産と管理をスマート化するもので、さらにこれを通して台湾の優れた農産物を世界に輸出していく狙いもある。
中央山脈最南端の大武山の麓、屏東県内埔の老٠ّ農場では、スマートマシンが大いに活用されている。
台湾農林公司はここに700ヘクタール余りの農地を持ち、2017年3月から茶の栽培を開始した。現在は第4期に入り、すでに200ヘクタール、単一面積では台湾最大の茶畑となっている。
台湾農林公司茶葉処の鄭志民マネージャーによると、ここでは開墾当初からシステム化管理と機械化生産というスマート農業の思考を導入してきた。「私たちはスピードで勝負しています」と鄭志民は言う。
一面の緑の茶畑で、女性従業員が茶摘機を操作している。茶摘機1台当たり一日で3ヘクタールの茶摘みができるが、人手による場合は3〜4人で一日働いても0.5ヘクタールしか採れない。
ここで特別なのは2億元を投じてイスラエルから輸入した点滴灌漑システムだ。茶樹の下にパイプを設置し、40センチ間隔に開いた穴から水をやるというもので、一度に10ヘクタール、1時間に1リットルの水やりができ、茶樹の間の通り道には水はまかないため、従来の方法に比べると水量を7割も削減できる。
「灌漑システムは節水だけでなく、電力も人手も削減できます。自動制御なので電気代の安い夜間に灌漑でき、昼間に比べて蒸発量も抑えられ、さらに水と一緒に肥料をやることもできるので、標準化が実現できます」と>H志民は言う。
老埤農場では作業の自動化の他に、製茶職人の20年余りの経験をビッグデータ化することを目標にしている。これにより製茶プロセスの調整で香りや色合いの異なる茶を作り、カスタマイズ生産できるようにしていく。
スマート農業4.0のもう一つの目標は「生産販売サービスのデジタル化」である。生産から加工、包装、販売までを一貫して行なう元進荘畜産では、スマート禽舎とHACCP認証、生産履歴などを通して、消費者に産地から食卓までの安心・安全を保障している。
元進荘の盧瑋翎主任によると、従来の露地の開放型禽舎は1.0のレベルに属し、天候の影響を受けやすく鳥インフルエンザにもかかりやすい。これに対して4.0の設計は、密閉したトンネルのような建物で、餌・水やりは自動化され、床下には体重計があって、毎日の平均体重の変化をモニターすることができる。
桃園の源鮮農場では温室の環境制御システムを導入している。ここの立体温室は現在世界で最も層数の多い14層だ。温室内の温度湿度、風速などはすべてコントロールされてマイクロクライメイト(局所気候)が作り出されている。また「バクスター効果」を参考に温室内にクラッシック音楽を流して植物の養分吸収を促し、温室内では緑の葉野菜がそよ風に揺れている。
老埤農場では最初からシステム化と機械化生産を導入し、最少の人数で運営している。