フェンシング――知恵の戦い
大きな目にえくぼが愛らしいフェンシング選手の程昕は、幾度も台湾を代表して国際大会に出場してきた。輔仁大学体育学科3年生の彼女がフェンシングを始めたのは5年前のことだ。以前はフィギュアスケートの選手で、台北市立育成高校の体育班にいた時に先輩に勧められ、フェンシングに転向した。
フェンシングの経験が浅い頃は、強い選手を相手に、15本先取した方が勝ちという試合で1~2本しか取れないこともあった。だが、大きな得点差にも決してくじけることはなかった。「敵は自分なんです。相手と実力に大きな開きがあっても、前回より1本でも2本でも多く取れればそれは進歩ですから」と言う。彼女はチームの仲間の協力を得て、攻撃力を高めていった。フェンシングを始めて5年、程昕はすでに全国インターカレッジで3連覇しており、アジアU23フェンシング選手権大会でも3位という成績を上げている。
ユニバーシアードが台北で開かれることとなり、程昕は多くの人にフェンシングという魅力的なスポーツを知ってもらいたいと考えている。ウエイトリフティングやテコンドーなどと比べると、この西洋の剣術は台湾ではあまり馴染みがない。フェンシングには「フルーレ」「エペ」「サーブル」の3種目があり、それぞれ使用する剣の外見が少し異なるだけでなく、サーブルは他の2種目とは試合のルールにも相違がある。いずれも相手の身体に剣先が一定の力で当たれば得点となるが、サーブルの場合は、「突き」の他に「斬る」という動作でも得点となる。そのため、攻撃のスピードは非常に速く、試合は緊張感があって刺激的である。
フェンシングでは、相対する二人の選手がフットワークを使って一進一退しつつ、互いの戦略を読みながら攻防を繰り広げる。そしてほんの一瞬の動きで得点が入るところに程昕は大きな魅力を感じていると言う。実践経験では西洋の選手には及ばず、また東洋人は小柄なので不利でもあるが、程昕は自分の弱点の克服に努力してきた。そして敵が自分の仕掛けた罠に思い通りにかかり、その一瞬を突いて得点した瞬間、何ものにも代えがたい達成感が得られると言う。
ユニバーシアード初出場の程昕に対して、国立体育大学修士課程に学ぶフェンシング選手の徐若庭は、すでに4回にわたって台湾を代表してユニバーシアードに出場している。2012年にはロンドンオリンピックにも出場し、ベスト32に入った。台湾のフェンシング女子選手としては初めてのオリンピック出場だった。
再びユニバーシアードの競技場に立つ徐若庭は、今は一人の母親でもある。大会に備えて練習に励むと同時に、1歳余りの娘の世話もしなければならない。練習を終えて帰宅すると、娘と遊んでやることもできないほどヘトヘトに疲れていると言う。家庭と選手の両立は厳しいが、精神的には以前より大らかになって「絶対に勝たなければ」という気負いもなくなり、ゲームを楽しめるようになったと語る。
大会での経験が豊富な徐若庭は、過度に緊張すると普段の実力が発揮できないという。試合のプレッシャーに対して、彼女は独自の解消方法を持っている。試合前にはイヤホンをつけて音楽を聴くか、目を閉じてこれまでの試合での痛快なシーンを回想するのだと言う。
今年初めてユニバーシアードに出場する体操の若手選手・唐嘉鴻。鉄棒と床を得意とし、宙を飛ぶ感覚が好きだと言う。
今回のユニバーシアードから、散打(対戦形式)と套路(演技形式)の二つの武術競技が加わった。写真は我が国の散打の有力選手・陳暐婷。
ユニバーシアードでは今回から、散打(対戦形式)と套路(演技形式)の二つの武術競技が加わった。写真は我が国の武術長拳の選手・蔡沢民。
相対する二人の選手が一進一退しつつ互いの戦略を読みながら攻防を繰り広げる。一瞬の動きで得点が入るところがフェンシングの魅力だと程昕は語る。(荘坤儒撮影)
大きな目にえくぼが愛らしいフェンシングのアイドル・程昕。多くの人に観戦してもらい、フェンシングの魅力に触れてほしいと願っている。