テクノロジーで農業を変える
「この制御盤は水遣りや施肥を定時に行ってくれるだけでなく、気温や湿度などの天候や作物の生長段階に合わせ、いつでもどこにいてもLINEを通して調整できるという真のスマート化を実現しました」と呉昱鋒は言う。
以前なら農家のニーズに基づいてプログラムを作成し、あらゆる機能を一つの大型制御盤に組み込んでいた。そのため費用も20~30万元以上になり、スマート農業を始めようとする農家にとって価格が大きな壁となっていた。
制御盤を小さくするという考えは、起業して徐々に農家の苦労を知ったことによると呉昱鋒は言う。電気工学を学んだ後、オンライン・プラットフォームで起業したこともある彼は、「ハイテク·オタク」であるとの自負があり、3年前に100万元を投資して、ハイテクによるキノコ栽培にも手を出した。マッシュルームをパガス(サトウキビの搾りカス)に植えて栽培する方法をプログラミングし、自動栽培を行おうとしたのだ。だが成功しなかった。失敗の原因は「技術者の傲慢」だと彼は悟った。農業には、自動化では対応できない細かなノウハウが多くあるのだと。
そんな謙虚な思いに至るには、農家の真のニーズを理解する頼信忠との出会いがあった。桃園農業改良場の研究員である頼信忠は、短期間で野菜や果物の栽培ができる技術や知識を、クラウドプラットフォームを使って農家に広めたいと考えていた。だが、1束20~30元の野菜を扱う農家にとって、30万元もする設備投資は利益回収も難しい。そんな設備が使えるのは、大規模農場や蘭など高単価なものを扱う農家だけだった。
だが「テクノロジーで農業を変える」という夢を持つ呉昱鋒が、ビジネスチャンスを見出した。制御盤をシンプルにすればいいのだ。そこで、プログラミングやツール開発の得意な郭晋良、そしてマーケティング担当の楊倩雯に相談し、3人の意見が一致した。2022年9月、「智食良果」が設立される(英語名のKiaoは台湾語の「巧」で、「聡明」の意)。これを商機と見るだけでなく、スマート農業を社会に役立てようと、IoT対応制御盤の設計製造に投資することになった。
照りつく太陽の下での農作業からの解放という理想を、スマート農業は実現するかもしれない。