No ESG, No Money
長年にわたってグローバルな投資動向を観察してきたことから、程淑芬は早くから世界的に責任投資が重視されていることに気付き、また責任投資がサステナビリティに良い影響をおよぼすことを知っていた。そこで国泰金控のCIOである彼女は、2014年にグループの高級管理職を率いて責任投資小委員会を発足させ、台湾企業に脱炭素化への転換を働きかけることにした。
CSR(企業の社会的責任)の概念が、しだいに数値化できるESG(Environment環境保全、Social社会的責任、Governanceコーポレートガバナンス)へと転化し、それが企業の持続可能な経営の指標となっている。台湾企業もこの流れに乗らなければならなず、彼女は公の場で「No ESG, No Money」と呼びかけている。
世界的な脱炭素の流れにおいて、企業が環境への配慮をガバナンスに取り入れなければ、融資を受けられず、注文も入らなくなる。「No ESG, No Business」なのである。アップルやTSMCもネットゼロを提唱し、サプライヤーにも同じことを求めている。「サステナビリティとは、一つの企業があと100年存続することです。地球が持続可能でなくなり、皆が低炭素化への転換をしなければ、それ以外のサステナビリティも意味を持ちません」と言う。
台湾の中小企業が、情報ルートを持たないために、新たな流れに追い付けないことを心配し、程淑芬はリーダーフォーラムに参加したり、港都会、盤石会などの企業団体を訪ね、経営者に会う機会を見つけては、低炭素化への転換はコストではなく投資であると説いてきた。「私はおせっかいなので、機会さえあれば一社でも多くにこの考えを伝えてきました。ESGに向うことは世界にとって良いことなのですから」と言う。
脱炭素は避けられない道であり、程淑芬は資金の力を活かして企業に低炭素化への転換を呼びかける。(荘坤儒撮影)