嘉義県東石の沿岸を上空から見下ろすと、海面に無数のカキ棚が広がっているのが見える。台湾西部の沿岸におけるカキ養殖の風景である。養殖をする人々は、引き潮の時にモーター付きの筏でカキ棚の間を縫いながら棚から垂れ下がったカキを収穫していく。陸上では伝統の三合院建築の一角で女性たちがおしゃべりをしながら手際よくカキの殻をむいていく。彼女たちの手には歳月の痕が刻まれている。
場所を彰化県の芳苑に移すと、こちらでは「海牛がカキ田を耕す」、つまり牛車に乗ってカキ棚の間を移動する伝統的な作業が見られる。陽が西に傾くと、主人の乗った車を引きながら老牛が広大な潮間帯をゆっくりと帰ってくる。こうした光景は、何年か後には記憶にしか残っていないかも知れない。
見事な手さばきで殻を剥いていく中高年の女性たち。(彰化県王功)
農家が田畑を見回るように、カキ養殖業者もカキ棚を見回る。(彰化県芳苑)
殻から取り出したカキの身は塩水につけて味が落ちるのを防ぐ。(嘉義県東石)
仕事が終わると、老牛は主人の乗った車を引いて夕日の中を帰っていく。(彰化県方苑)