カラスミの美味さの秘密
同じく海産物を塩漬けにした食品にカラスミがある。
毎年、冬至の頃に寒波が襲うと、ボラの群れが南から台湾西岸へとやってくる。まるで漁師と約束していたかのように、年に一度台湾沖へ来るのである。台湾では明の時代からボラ漁とカラスミ作りが行なわれていた。学者の中には、多くの漢人がボラ漁のために台湾へ渡り、それから定住するようになって集落を作ったと見る人もいる。オランダ統治時代には、台湾へボラを捕りに来る漁船にボラ税をかけたことからも、この魚がもたらす経済的利益の大きさがわかる。
日本統治時代に入ると、カラスミの生産技術が発達した。多くの地域で水産団体が組織され、専門家を招いて学んだり、講習会が開かれたりしてカラスミの改良が進んだ。そして今日、カラスミは高級な贈答品、台湾を代表する海産物となったのである。私たちはカラスミの重要な産地である雲林県口湖郷を訪れ、全国カラスミコンクールで4年連続優勝している荘家兄弟――荘国顕さん、荘国勝さんを訪問した。
加工場の外では、橙色で琥珀のように輝くカラスミが天日干しされている。イメージしていたような暗い色ではなく、辺りに生臭さもなく、海風の香りがするだけだ。その理由は、荘国顕さんが養殖池からボラを収穫する前に池の中で血抜きをし、卵巣に血の匂いがつかないようにしているからだ。その後に水揚げされたボラは、すぐに低温で加工場へ送られる。油分を多く含んだ卵巣は腐敗しやすく、鮮度を保つために時間との競争となる。ボラの腹から卵巣を取り出す作業員はすでに現場で待っていて、ボラがトラックから降ろされるとすぐに自動的に小さな生産ラインができる。一人がボラの腹を切り開くと、次の人が身から卵巣を分離し、次の人が卵巣を取り出す。息がぴったり合っている。
続いて取り出した卵巣の血管の血や粘膜を手作業で剥がす。だが、このままカラスミ作りに入るわけではなく、まず数日冷凍して表面の粘膜の強度を高める。こうすることで、重石をのせても耐えられるようになる。
香り高く、噛み応えのあるカラスミは、スライスして食べてもいいし、料理に加えることもできる。