周縁から主力に
屏東は農業の盛んな県であり、どちらかと言えば保守的な土地柄だと言える。そんな屏東が全国に先駆けて新住民による地域づくりを進めたのには、特別なわけがある。
実際、多くの新住民が台湾に嫁いできたばかりの頃は、彼女ら自身が家計を担わなければならなかったり、子供の世話や親の介護もやらなくてはならず、新住民が外に出て活動することに賛成してくれる家は少なかった。また、一般の人も、新住民と接する機会が少ないため、彼らを差別的な目で見たりしがちで、互いの間に溝ができてしまっていた。
そこで屏東県文化処芸文推広科の李佳玲さんは、「新住民に対する地域の人々の偏見や固定観念を、このプロジェクトによって取り払うことができれば、と考えたのです」と言う。
「新住民による地域発展及び文化推進プロジェクト」を進めることで、双方のコミュニケーションの場が作れるだけでなく、すでに台湾に来て10年、20年になる新住民にも、市民活動への参加を促すことにつながった。
「地域づくりというのは、『人づくり』をする仕事です。人の参加こそが重要で、地域の一員となった新住民には、もちろん市民活動に携わる能力を身につけてもらう必要があります」と李佳玲さんは言う。
常に新住民に寄り添い、一歩一歩ともに進んできた好好協会の蔡順柔・主任は、まださらに先を見つめている。蔡主任は「政府は、学校教育のカリキュラムに母語教育を導入する計画を進めています。今年すでにいくつかの学校で母語教育が実施されており、2019年には全面的実施となる予定です。その時が来れば、プロジェクトで授業をした新住民は、第一線で活躍できるはずです」と言う。
家の外へと踏み出すことは、家から離れることを意味するのではない。それはむしろ地元との結びつきを深めることになる。10年、20年と奮闘し、この地に根をしっかりと張りながら、新住民はすでに台湾にとって不可欠な文化推進者となっている。
自己紹介をするために、多くの先住民は故郷の文物を持ってくる。写真はインドネシアの竹製の打楽器アンクルン。
馬月娥さんは地元の恒春で採れるヤシの葉でインドネシアの編み笠を作った。新しい家での生き方を見出したことを象徴している。