馬祖新村——古き良き時代を残す
1957年に建てられた馬祖新村(馬村)は、馬祖列島に駐留していた陸軍第84師の軍人の家族が暮らしていたエリアで、洋風建築に米国風の庭が取り入れられている。赤レンガに灰色の瓦、赤と白のストライプの扉、緑の窓枠が特徴で、一戸ずつ前後に庭がある。桃園市文化局文創影視科の陳瑋鴻科長によると、ここには多くの高級将校が暮らしていて「将軍村」とも呼ばれ、家々には軍人としての階級を象徴する星がつけられていた。
それが2004年に歴史建築に指定されると文化局が修繕を行ない、眷村(軍人とその家族が住む地域)が桃園市で初めて文化財として保存されることとなった。一般の故事館は一軒家だが、馬祖新村の敷地は2.6ヘクタールもあり、幾度かに分けて改修して公開することとなった。
その間に住民から聞き取ったオーラルヒストリーを読むと、眷村での暮らしが目に浮かんでくる。一家の主は前線に赴く前に、近所に声をかけて留守の間のことを頼み、残された女性たちは一人で子供を育て、内職や裁縫などをして収入を補っていたのである。
治安が良く、夜間の戸締りも必要なかった時代、子供たちはいつも徒党を組んで外で遊んでいた。自分の子も近所の子も同じように叱り、子供たちは近所の家でご飯を食べるなど、近所同士は家族のように暮らしていた。
大晦日には中国大陸の故郷の住所を読み上げたものだが、異郷だった台湾がしだいに故郷へと変り、それぞれの家が物語をつづってきた。
これらのオーラルヒストリーを通して、文化局は当時の眷村の光景を再現しようと考えた。新村の中の一軒を「眷村故事館」として時代の物語を保存することにしたのである。陳瑋鴻科長によると、ある年配の婦人は、屋内に入って明星花露(昔からある香水)の香りをかぎ、角にある古いミシンを見て、昔を思い出し涙を流したという。また、以前の住人は毎日ここまで散歩をしてきて、大陸訛りの言葉で軍隊での歳月を語ってくれるという。時代は変わったが、当時の景観が残っていることが、彼らの心を慰めている。
中平路故事館には、かつての住人である王さん一家の暮らしを彷彿とさせるコレクションが展示されている。