「大学受験移民」
以前は香港・マカオ・台湾学生の枠に華僑が含まれていなかったため、大陸の大学に入りたい華僑は祖先の出身地に戻って一般の入試を受けるしかなかった。その後、各地の華僑指導者から意見が出され、華僑学生も香港・マカオ・台湾の学生と同等に扱われるようになった。
2002年まで大陸の大学に入る華僑学生は100人余りだったが、2005年に突然5200人に激増した。この時、教育部は福建省だけでフィリピン華僑が1000人に達することに気付いた。調べると、海外に行ったこともない学生が、数十万人民元あるいは500万香港ドルを投じて、東南アジアや香港・マカオで投資移民の方法で国籍を得て、華僑として受験を申し込んでいたのである。結局、正式な資格を持つ華僑学生は81人に過ぎなかった。
こうした「ニセ華僑」を排除するために2007年から、海外の長期居住権または永住権を持つ華僑学生は、最近4年のうち2年以上、毎年9ヶ月以上海外に居住していなければならないという規定ができた。
「ニセ外国人」という問題もある。大陸の入試内容は学生の条件によって異なり、難易度にも差がある。最も難しい試験を受けるのは現地の一般学生、次が華僑・香港・マカオ・台湾の学生、そして外国人学生は最も簡単な試験ですむ。中には中国語能力試験に合格すれば入学を受け入れる大学もある。数年前、上海で違法な仲介業者を通してベトナムやボリビアの偽造パスポートを購入して受験した学生が検挙され、学籍を剥奪された。この事件以来、学生の資格調査は厳しくなった。
「一本」「二本」とは?
大陸には大学・短大に相当する学校が1908校あり、政府が最も多くの資源を投入する国立大学以下、省属大学、地方付属学校、私立学校などがある。9割を占める私立学校を出ても学位は得られず、証明書が得られるだけである。
大陸では毎年約1000万人が大学入試を受ける。2002年まで合格率は13%だったが、ここ2年は23%まで上昇した。それでも競争率はまだ高い。
受験生が多くて地域も広いため、合格発表は一度にできず、等級にしたがって発表される。最初に発表されるのは、最も競争率が高く公費で勉強できる師範大学と軍学校だ。次は「第一批次本科大学」(俗に「一本」と呼ばれる。北京大学、清華大学、上海復旦大学などの名門を含む)、その10日後に「第二批次」の合格発表があり、続いて「三本」私立大学、「四本」職業学校と続く。全ての合格発表には1ヶ月ほどかかる。
華僑・香港・マカオ・台湾の学生の合格発表も同じだが、これらの学生を受け入れる大学は「一本」の105校と「二本」の178校だけである。
高得点不合格と破格合格
台湾人学生は「一本」と「二本」の志望校をそれぞれ2校ずつ、合計4校を志望できる。難しいのは、もし2人の受験生の点数が同じか、あるいは最低合格基準に近い場合、「一本」大学はしばしば自校を第一志望にした者を採用するため、同点の志望者の一方が「二本」大学にしか行けないこともある点だ。こうした「高得点での不合格」を避けるため、志望校を記入する前に自分の点数を慎重に分析しなければならない。
逆に「破格の合格」という状況もある。過去の経験では「二本」に属する華東政法学院は台湾人学生を120人ほど合格させてきたが、2008年に中国政府は一部の政法学院に現地学生の定員を確保するよう求めた。同校は定員を明確に発表していなかったため、300点以上を取った台湾人学生40人余りが不合格となり、抗議の声が上った。話し合いの末、この40人余りは同じく「二本」に属する他の学校へ配分された。
これについて、上海の大学は今後はあらかじめ定員を発表するとしているが、他の地域の大学はそうしていない。台湾人学生に最も人気のある北京大学も試験前に定員を発表しておらず、合格者も少ない。2008年に合格した台湾人学生は3人のみで、それまでの2年間は1人も合格していない。現在、北京大学に在学する台湾人は10人に満たないと見られる。
開放されていない学科
かつて一部の学校では、入学した学生のレベルが低すぎるとして教授たちが抗議し、それ以降は合格者数が減った。例えば上海立信会計学院ではここ3年、華僑・香港・マカオ・台湾の学生を採用していない。復旦大学獣医科、同済大学建築学科などの人気のある学科も、これらの受験生を受け入れていない。
さらに、中国音楽学院、中央音楽学院、北京電影学院、中央美術学院などの芸術系大学は、学校ごとに単独で試験を行なっている。華僑・香港・マカオ・台湾からの受験生も増えているが、特別待遇はなく、現地の受験生と競争しなければならない。
学費は現地の学生と同じ
2005年まで、華僑・香港・マカオ・台湾の学生の学費は1学期1万2500人民元で現地の学生の2〜3倍だったが、我が国の連戦・前副総統が大陸を訪問した際に学生の権益を求め、今は現地の学生と同じ1学期5000〜6000元になった。
(資料提供:中国教育部香港・マカオ・台湾事務弁公室 李大光副主任、上海教育考試院 顧文輝研究員、北京大学華僑・香港・マカオ・台湾募集事務所。詳細は下記のホームページを参照。http://www.gatzs.com.cn)