基礎研究による科学的証拠
10種の薬材を用いた清冠一号は、中医薬研究所の五つの実験室が基礎研究を行った結果、新型コロナウイルスに対して解熱解毒や体質向上の作用があると証明され、その成果を2021年1月、医学雑誌『Biomedicine&Pharmacotherapy(生物医学と薬物療法)』に発表した。
清冠一号の効果は、西洋薬の抗ウイルス薬より優れている。蘇奕彰の分析によれば、それは清冠一号がマルチターゲット型の治療薬だからだ。変異ウイルスのデルタ株やオミクロン株を含め、ウイルスの感染、複製、炎症という三つのターゲットを抑制する。つまり、症状の抑制、ウイルス感染阻止、心肺機能安定を同時に達成する。
中医薬研究所で基礎研究チームを率いる蔡耿彰‧副研究員の説明によれば、清冠一号はウイルスのスパイクタンパク質とACE2受容体の相互作用をブロックして細胞のウイルス感染を防ぐ。たとえウイルスが細胞に侵入しても、清冠一号はウイルスの3CLプロテアーゼをブロックして、ウイルスが複製できなくする。
難解な生物医学用語が続いたので蔡耿彰は説明を加えてくれた。肺細胞のACE2受容体はいわば錠前で、コロナウイルスのスパイクタンパク質は鍵と考えればいい。中薬のドクダミは鍵にくっつく(スパイクタンパク質を変形させる)働きがあるため錠前を開けられない。つまり感染しない。たとえ感染しても、中薬の成分であるオウゴンがウイルス複製に必要なプロテアーゼの作用部位をブロックし、細胞内での複製を防ぐ。
重症患者の場合、コロナウイルスは肺のマクロファージを攻撃してサイトカインストームを引き起こし、臓器や組織に深刻なダメージを及ぼすので死に至ることもある。だが清冠一号と二号は、マクロファージから放出される腫瘍壊死因子αやIL-6(炎症性サイトカインの一種)を阻害するので、肺の損傷や繊維化のリスクを軽減できる。
重症患者対象の清冠二号には心肺機能を強化する成分を加えた。中医薬研究所の肺塞栓症‧脳卒中実験室では、清冠二号を基礎実験に加え、肺線維症を防ぐメカニズムを明らかにした。
2020年、世界的に感染が拡大すると、GMP認定メーカーの順天堂と荘松栄は5月に処方使用の認可を受け、直ちに製剤化の研究を開始、かねてから臨床使用していた煎じ薬を元に製剤し、短期間で輸出ライセンスを受けた。
清冠一号(NRICM101)に使われている薬材ボウフウ(順天堂薬廠提供)