テクノロジーと創意
他にも地域の特性に合わせた事例は少なくない。桃園市では「水防アプリ」をダウンロードすれば、豪雨の時に水害が起きている場所や避難ルートがすぐに分かり、さらに市民がアプリを通して水害情報を通報することもできる。台南市では成功大学と協力して、感染症予防のためのクラウド統合プラットフォーム「掌蚊人」を構築した。感染症予防マップや殺虫剤散布マップなどの資料を公開する防疫アプリである。
桃園市消防局は、3年をかけて7つの部門の16のシステムを統合し、「スマート行動派遣119」を確立した。IoTを通してあらゆる情報を収集・分析し、決定に活かすというものだ。
これまで消防隊員は資料を調べて消防用水の採水口を探さなければならなかった。また、ディーゼルオイルや硝酸、トルエンなどの発火物や化学物質がある時は、消防隊員は400ページにものぼる資料をめくり、それらの危険性や使用状況について調べる必要があった。
現在では119通報センターが火災や地震被害の通報を受けた時、現場の指揮官がアプリを開くと、出動車両の戦力がリアルタイムに掌握でき、必要な場合はさらに応援を出すことができる。危険物や有毒物質がある場合は、アプリが消防隊員に警戒を呼びかけ、同時に危険性と救援方法も分析されるため、指揮官は最良の消火救援方法を採ることができるのである。
桃園市消防局によると、アプリを有効に使うことで、2015年には521秒だったレスポンスタイムが2017年には468秒になり、53秒短縮することができたという。
また、画像認識AI技術を警察業務に活用することもできる。工業技術研究院と新竹市警察局、新北市警察局が共同で運用する「DeepLookクラウドスマート画像分析システム」である。警察が違反車両や盗難車を追跡するために交差点の監視画像を調べる際、このシステムはAIを用いて大量のデータを分析し、クラウドコンピューティングによってターゲットの車両ナンバーを識別することで、処理の時間が大幅に短縮された。
交通事故の多くは交差点で起こるため、工業技術研究院は「十字路衝突防止警報システム」を開発し、新竹県・市の6ヶ所に設置した。このシステムは十字路で危険な車両を発見すると、衝突3秒前に運転者に危険を知らせることができる。
「今後は単一都市における応用から、都市を跨いだ利用へと拡大していくことで、充分な経済効果が上げられるでしょう。YouBikeとMRTを結び付けたスマート交通やETCのように、世界に輸出し海外市場を開拓することも可能なのです」と工業技術研究院の蘇孟宗主任は語る。
台北市健康路は「スマートIoT街灯」の実験エリアとなっている。
桃園市は雨量・水位観測器を60ヶ所に設置し、リアルタイムで降水量と水位、画像などのデータを提供している。
「桃園水防」アプリをダウンロードすれば、水害発生状況や避難所の情報が得られる。
消防隊員は「スマート行動派遣119」を通して出動前に道路状況を確認でき、消防活動の計画を立てることができる。
桃園水資源回収センターは、台湾で初めてIoTを用いて水質モニタリングを行なう部門である。(林格立撮影)
2016年、台北市では150の小学校に「エアーボックス」を設置して汚染状況を監視し始めた。これは訊舟科技(Edimax)と瑞昱半導体(Realtek)が寄贈したもので、環境教育に活かすこともできる。
スマートシティの最終目標は人を大切にすること。快適で住みやすく、持続可能な都市を目指す。(林旻萱撮影)