センサー付きトライアスロンウェア:2PIR
自転車や釣り具の代理店からスタートした三司達(Sunstar)は、スポーツウェアを手掛けて60年になり、市場や流通、消費者のニーズを熟知しているのが強みだ。スマートウェアの分野でも、同じように着心地の良さを開発の優先的条件としている。
心拍センサーはスポーツウェア分野で注目されている項目である。アスリートは、科学的データを練習の参考にしているからだ。しかし、従来の心拍計は胸部に取りつけるため、スポーツの妨げになる上、位置がずれて精確なデータが取れないことが多い。
三司達はこのニーズを知り、また紡織産業総合研究所(TTRI)で導電性テキスタイルが開発されて生体情報モニタリングが可能になったことを知った。そこで董事長の周邦秋は、これを利用して胸ベルト心拍計や光学式心拍計より精確にデータが取れ、しかも着心地のよいものは作れないかと考えた。
ここから三司達はスマートテキスタイルの分野に足を踏み入れ、2PIRのブランドで世界初のトライアスロン用センサー付きウェアを開発した。一般の心拍数測定アプリと組み合わせて使用できるものだ。
心拍数モニタリングの話をうかがっていると、さまざまな医学専門用語が出てきて、このトライアスロンウェアを開発するために、同社が医学の分野まで深く踏み込んで研究してきたことがわかる。同社のセンサー付きウェアが検知するデータは医療レベルの機器が検知する数値と99.3%一致するという精度の高さだと、マネージャーの辜銘仁は、まるで自分の子供のことのように誇らしそうに語る。
開発も三司達が中心に行なった。伸縮性織物電極や生地の貼り合わせ技術も自社の特許である。さまざまな使用状況で、信号をいかに安定的に伝えるかに開発スタッフは知恵を絞った。
台湾では繊維産業クラスターが整っているため、彼らは海外に素材や技術を求めることなく、すべて台湾製で完成させた。自社の強みを活かしつつ台湾の完備したサプライチェーンを取り込み、TSTAを通して各社の協力を得ることができた。三司達のトライアスロン・ウェアは台湾の産業統合の代表作とも言える。
次の段階の製品はセンサー付きレギンスTENSである。ふくらはぎの筋力と乳酸の蓄積程度をモニタリングする機能を持ち、さらに低周波のマッサージ機能で筋肉のストレスを緩和させる。こうした事例からも、スマートテキスタイルが消費者のニーズに、他では得られない解決策をもたらしていることがわかる。
この吸湿排汗性を持つ生地が日本のメーカーに高く評価され、2020年の東京オリンピックに採用されることとなった。