海外市場と金融包摂
海外に目を向けた場合、顔認識市場における将来的な競合相手は主に欧米だろう。林郁庭によれば、白人と黄色人種では顔の骨格が異なるので、アジア人の顔をAIがフェイクだと判断したこともあったという。だがAuthmeの優位性は、北東アジアと東南アジアの何百という顔のデータを集めていることにある。このデータを使えば、AIモデルのトレーニングや、連合学習によるAIモデルの最適化ができるので、正確度は99.7%に達する。
顔認識だけでなく、Authmeは身分証の認証も行う。光学文字認識(OCR)技術を使ってパスポートのデータをスキャンし、スマホのNFC(かざして通信する)機能を使ってパスポートのチップを直接読み取るのだ。林郁庭によると、Authmeはすでに欧米、日本、韓国でこの技術の特許を取得しており、これで海外市場への進出をねらっている。
Authmeの最高執行責任者である曽国展は、以前インドネシアで水産養殖業を手がけたことがあるが、同国の田舎には銀行のない所が多く、住民は金融サービスや融資を受ける機会がないのを見ていた。だが、今や誰もがスマホを持ち、そのテクノロジーで平等な権利を得て、金融包摂を享受できるはずだ。林郁庭によれば、ネット回線速度や地域特有の問題についてもAIモデルの最適化を通じて、Authmeは東南アジア市場のニーズに応えている。
デジタル技術の応用はますます拡大しているとはいえ、詐欺を阻止するための第一線はやはり本人確認だ。李紀広はこう言った。「これは全世界が直面している問題ですが、台湾はこの分野で傑出しています。国際政治的な原因で我々はしばしば攻撃にさらされているからです。テクノロジーは我々のハードパワーであり、解決の道を見つけることができれば、それを全世界に広めることができるのです」
Authmeのマーケティング・ディレクターである林郁庭は、AI技術を使えば身分証が本物かどうか迅速に識別できると考える。(荘坤儒撮影)
Authmeはアジア人の顔認識を専門とし、テクノロジーによって「あなたが誰か」を判別する。効率よく、しかも人の目では見破れないものも見抜く。(Authme提供)