加工品で国際市場へ
サツマイモは常温だと約2週間で発芽するので、今のところ輸出は主に加工品だ。が、コールドチェーンが導入されて8~10カ月の保存が可能になり、1年を通して供給できるし、貯蔵や運搬時に受けるダメージも減らせるようになった。
サツマイモの栽培面積は9000~1万5000ヘクタールを維持しており、彰化、雲林、台南の県と市で台湾全体の3分の2を占める。
台湾最大のサツマイモ栽培面積を有する雲林県水林郷で主に栽培されるのは台農57号だ。契約栽培を行ない、ブランド「阿甘藷叔(サツマイモおじさん)」として販売されている。
2000年に水林郷瓊埔地域発展協会の当時の理事長だった蘇淵源が、農家のためにサツマイモの付加価値を高めようと、一流ホテルで広東料理のシェフをしていた息子の蘇嘉益に故郷に戻ってサツマイモ料理のレシピを開発するよう説得した。
2013年、蘇淵源は「保証責任雲林県瓊埔合作農場」を設立。契約栽培や生産履歴システムの確立を進め、健康な苗を植える技術や、畑でのスマート監視システムを導入したことで、生産販売履歴認証や世界基準の農業認証Global G.A.P.を取得した。一方、蘇嘉益は食品の開発と加工、ブランド「阿甘藷叔」の立ち上げとマーケティング、そして栽培からコールドチェーン、加工、販売へと連なる産業チェーンを整えた。瓊埔合作農場のサツマイモは、今やセブンイレブンの蒸しサツマイモに使われているし、「阿甘藷叔」商品は日本、シンガポール、香港、オーストラリア、マレーシアなどにも売られている。
シェフだった蘇嘉益は、雲林産のピーナッツと組み合わせたスナック菓子や、屏東・万丹産の小豆を使ったサツマイモ団子を開発した。ほかにもサツマイモコロッケ、サツマイモとヤマイモの汁粉、サツマイモとヤマイモのチキンスープなどは香港人に好まれている。日本人に人気があるのは台農57号を使ったチップスで、紫芋との2色チップスが東京などで売られている。冷凍焼きイモはアメリカの華人市場向けに輸出されている。
蘇嘉益は、サツマイモはおやつから食卓のメインディッシュへと進化したと言う。「上質の台湾農作物を用い、添加物などは一切加えず、そのままで『グルメの味』を創り出します」
台南市新化区にある瓜瓜園は、創設者・邱木城がサツマイモの小売りから始めて40年になる企業だ。1980年代にマクドナルドの進出でフライドポテトブームが起こると、邱木城はあるアイデアがひらめいた。形が悪くて売れ残りそうなサツマイモをフライドポテトやハッシュドポテトにして、ファストフード店の「頂呱呱」や「香鶏城」に売り込んだのだ。それが成功し、後には加工工場も設立してハラール認証も取得。現在はファミリーマートにも焼き芋を卸している。今年(2024年)には農業部(農業省)の立ち合いの下、サツマイモ製品を沖縄で販売すべく、日本の企業と覚書を交わした。
安定した品質維持のため、瓜瓜園は20年余り前から農家と契約栽培を行ない、冷凍焼きいもやチップスを輸出してきた。現在の契約面積は1000ヘクタールを超え、近年は健康な苗の供給や委託栽培に力を入れている。またサツマイモの「生態故事館」も開設した。入場者はサツマイモについて詳しく知り、その場でサツマイモを掘ったり、サツマイモ料理を食べたりできる。
農家の負荷を軽減するため、農業部と農家が協力してサツマイモの収穫機を導入した。(郭美瑜撮影)