エコパークのような工場
23ヘクタールという広大な宏遠興業の敷地に入ると、まずエコポンド(池)が目に入る。池の周囲にさまざまな植物が生い茂り、横の小道にはアヒルがいる。建物も大樹やつる植物に覆われていて、一般の工場のイメージとは大きく異なる。
夏は40℃近くまで気温が上がる台湾で、ここのオフィスにはエアコンはないのだが、思いのほか暑くない。総経理室の曾一正・協理が窓を開けると、外はうっそうとした緑陰で「これは緑のカーテンです」と言う。
宏遠は早くも2007年から環境に配慮した経営を開始した。当時の葉清頼・総経理の一声で各部門が動き出したのである。曾一正は当時エコポンドの工事を任され、屏東科技大学や洲仔湿地、荒野保護協会などを訪ねて専門家に教えを請い、エコポンド周辺に植えるために少なからぬ希少植物も持ち帰った。
環境配慮と言っても難しいことをする必要はないというのが宏遠の経験だ。「シンプル、便利、低コスト」というのが原則で、最も簡単な緑化のために積極的に植物を植え、敷地内に4つのエコポンドを作った。建物の周囲にはミスト装置を設置し、地面には透水性のあるブロックを敷き、屋内では省エネの扇風機を使うなどして、工場全体の冷房不使用を宣言した。
こうしてダイヤモンド級のグリーンビルディング認証を取得した工場は、古い工場を大改造したものだ。かつては24時間稼働していた冷房装置を止め、それに代わって一面に水の流れるアクアウォールと巨大な換気扇を設置することで、屋内でもそよ風を感じることができる。
産業におけるエネルギー消費量は一般の人の想像を超えるものだ。特に宏遠のように紡績から織布、染色整理、既製服製造までを行なう大規模工場では、こうした努力で節約できる費用が年間2億元に達する。
宏遠(Everest)が独自に開発した石炭灰のブロック。廃棄物を減らすとともに、同類の製品より大幅に安く売ることができる。