可能性を秘めた木酢液
木酢液とは何か?工業技術研究院中分院生質材料技術部経理・黄盈賓は長年にわたり木酢液の研究に携わっている。彼が道端で採取したツルヒヨドリを簡易的な炭化炉に入れると、有機物質が熱分解され、煙が立った。これが木酢液生成の基本的な流れだという。
有機物を燃焼し、炭化させる過程で不完全燃焼によって発生する煙を集めて冷却する。これを半年ほど寝かせると、比重によって上層の薄い油膜と下層のタール、中間層の木酢液に分離する。木「酢」液はその名の通り、酢酸を含み烏梅や羅漢果のような匂いがする。フェノール類やアルコール類など豊富な有機化合物を含み、抗菌消臭に有効である。日本人が最初に木酢液の活用法に気が付いた。以来、掃除用洗剤などに添加して、アンモニアの刺激臭を分解したり、農地に撒き、土壌を活性化する用途で使用されている。
炭化炉の火が消えた後、室中に酸っぱい匂いが淡く残った。「金華ハムのような食肉加工品も、実は木酢液を使って燻製したものです」と黄盈賓が説明する。この耳慣れない物質は、すでに私たちの生活に存在しているものだった。
讃炭工房代表・劉徳劭の粘り強い努力の結果、工房で精製されるツルヒヨドリの木酢液は品質が良い。工芸学科陶磁専攻の彼は、郊外に自分の窯を据え、電力やガスで加熱する正方形の小型レンガ窯と温度測定器を使って、焼却温度を正確にコントロールしている。
焼却温度は木酢液にどう影響するのか?温度が高くなると、木酢液中に混入するタールの量も多くなるため、農業用としては問題ないが、人体には使用できなくなる。日本では窯の温度の上限を500度としている。品質にこだわる劉徳劭は、窯の温度が300度を超えた場合は廃棄処分とする。不要なものを取り除いた後で1キロの木酢液を精製するために、24キロの新鮮なツルヒヨドリを使用している。
品質と安全を保証するために、花蓮分署は、ツルヒヨドリの木酢液を台美(Super Laboratory)に送り、SGS検査で重金属が含まれていないことを確認した。さらに、木酢液を原材料としてエコ洗剤メーカー「木酢達人」とコラボレーションを実現する。
循環経済を企業コンセプトとする木酢達人は、本来廃棄物である龍眼の木の剪定枝から木酢液を抽出して、商品の原材料にしていることをアピールしている。「余分な木材と除去したツルヒヨドリ、どちらも良いリサイクル資源です」と木酢達人の生産部経理・洪瑋麟は考える。
植物資源を再利用するという理念が一致し、木酢達人はすぐに協力を快諾した。そして、ツルヒヨドリから作られた木酢液を再度蒸留して、シャンプーやハンドクリーム、虫よけなど7種類の製品に使用した。第一弾として出荷された5,000本は、消費者の支持を受け、すぐに完売した。
花蓮分署と木酢達人が協力し、ツルヒヨドリの木酢液を使用した7種類の清掃用品を開発。