どこでも排出される二酸化炭素
簡又新董事長によると、病院でのエネルギー使用量削減は、病院管理者が長年直面してきた管理コスト削減という課題を一刀両断に解決することにつながっていると語る。
程毅君院長は双和病院を例に挙げて説明する。同病院は4年をかけて二酸化炭素排出量の20%削減に成功した。エネルギー使用強度(EUI)で見ると、年間平均220前後に抑えられており、台湾の平均値である224に近い。「しかし、この2年はやや停滞しています。ですから早晩、さらに一歩進んだスコープ3に進まなければ、現状は突破できないと思います」と語る。
数々の国際的なルールの中で、ISO 14064-1の2006年版では、温室効果ガス排出量の算定基準を3つのカテゴリー(スコープ1~3)に分けている。スコープ1と2は、企業が直接的、間接的に排出する二酸化炭素の量で、使用する電力、熱エネルギー、医薬品などが含まれる。程毅君院長が語るスコープ3というのは、病院や企業が独自にコントロールしにくい「間接的な排出量」で、サプライチェーンが排出する量を指す。例えば、従業員の通勤や取引先訪問、薬品輸送、それに医薬品の生産が生み出す温室効果ガスなどだ。
そこで、今回の会議では台湾最大の医薬品流通企業である裕利医薬台湾(Zuellig Pharma)と、台湾で現在最大の売上を誇る製薬会社の美時化学製薬(Lotus)を招き、病院側とともに将来的な温室効果ガス削減のソリューションについて意見を交わした。
台湾の病院にとって重要なパートナーである裕利医薬は、医薬品輸送に従来の発泡スチロールではなくeZ Coolerを用いれば、60時間にわたって低温が維持でき、しかも繰り返し使用できるという。またEuro 6の規定に符合した輸送車を導入して二酸化炭素排出量を減らし、さらに電気自動車で医薬品を安全に搬送する方法を見出したいということだった。
裕利医薬台湾の周志鴻総裁は、AIを活用した輸送も検討している。病院側と在庫情報システムを共有し、欠品が生じそうな時は、周辺の病院への配送を統合し、温室効果ガスを最小限に抑え、かつ効率よく輸送したいと考えている。
双和病院では医療廃棄物を再生利用してゴミ袋を製造している。院内で自給自足するだけでなく、販売することで収入も得られる見込みである。(林旻萱撮影)