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産業イノベーション

国家漫画博物館:

国家漫画博物館:

漫画は記憶とともに

文・曾蘭淑  写真・莊坤儒 翻訳・山口 雪菜

9月 2024

台中市西区の林森路には古めかしい木造の家屋群があり、歴史と歳月に照らされて幼い日々の思い出がよみがえる。親子で一緒に本を読んだ頃を懐かしむとともに、台湾漫画の現在の姿に触れることもできる。ここが「国家漫画博物館園区」である。

台中市西区の林森路には古めかしい木造の家屋群があり、歴史と歳月に照らされて幼い日々の思い出がよみがえる。親子で一緒に本を読んだ頃を懐かしむとともに、台湾漫画の現在の姿に触れることもできる。ここが「国家漫画博物館園区」である。

幼い頃から漫画を読んで育った黄淑娥は、漫画は庶民の記憶であり、生活の一部だと考えている。

新しい文化観光スポット

国家漫画博物館を訪れた人は「台中にこんなところがあったのか!」と声を上げる。

国家漫画博物館は建設地の検討に6年をかけ、最終的に史哲・前文相がこの日本統治時代の刑務所跡地に決定した。過去10年にわたって塀と雑草に覆われていた文化資産がついに神秘のベールを脱いだのである。

「そのため、2023年12月に開幕して以来、半数近い入場者は漫画ファン以外の人々です」と同博物館準備処主任の黄淑娥は説明する。美しい木造家屋が漫画博物館の看板となり、敷地内の静かでゆったりとした雰囲気に、漫画やアニメをテーマとした展覧会が加わり、台湾における新たな文化観光スポットとなったのである。

敷地内には演武場(1937年に完成した刑務官の武術訓練場)と職員宿舎群(1915年建設)がある。子供たちが好きな05展示室は、昔の大浴場だ。ここではテクノロジーを活かして漫画に色を塗ることができ、また漫画家・捲猫の「泡漫画(マンガの風呂につかる)」というコンセプトで、湯につかるキリンや、浴衣を着た捲猫などが配され、人気の撮影スポットになっている。

国家漫画博物館はイラストレーターの氫酸鉀に現場での制作を依頼し、屏風風の作品が完成した。

庶民の記憶の中の漫画

館内にいると「見てみて。これはお父さんが若い頃に読んでいた漫画本。あなたたちみたいにスマホで読むことはできなかったの」という声が聞こえてくる。

「博物館は庶民の記憶、生活の一部なのです」「あらゆる年代の人が、思い出に触れられるようにしたいと思っています」と黄淑娥は言う。

漫画博物館の所在地は林森路33号、ここにはかつての漫画貸本屋の雰囲気が再現されていて、無料でゆっくり漫画を読むことができる。貸本屋の一角には「合法的に版権を取得していない日本漫画(海賊版)」という標示がある。黄淑娥によると、ここは研究の場所でもあるという。

その話によると、1966年に施行された「編印連環図画輔導弁法」によって台湾では漫画出版が制限され、それによって多くの出版社が日本の漫画の海賊版を出すようになったのである。

台湾初のヒーロー漫画『諸葛四郎』。

漫画ファンの聖地

12号展示室には1950~2020年までの漫画雑誌が収蔵されており、漫画ファンはその長い歴史から台湾漫画発展の経緯を見ることができる。漫画の研究や創作に活かしたり、記憶をたどったりすることもできる。もう一つのコーナーには新刊が展示されており、不定期に出版記念会や作家とファンの交流会なども開かれている。

漫画博物館の最大の特色は特別展だ。現在は最初の特別展として「葉宏甲百年記念展」が開催されている。2024年は葉宏甲の誕生100年に当たり、その息子の葉佳龍が2023年10月26日に1万点に上る葉宏甲の原画を漫画博物館に寄贈したのである。特別展では100点余りの原画や表彰状などが展示されている。器物の展示の他に、動画や映画展などもあり、見学者は見たことのない仕掛けなどを見ることができる。

台湾で最初に登場した漫画のスーパーヒーロー諸葛四郎は、1950年代の集団の記憶である。葉佳龍は劇団「紙風車」に諸葛四郎の舞台劇のライセンスを1元で譲渡し、すでに50回上演されている。「諸葛四郎という知的財産を若い世代にも知ってもらいたいのです」と黄淑娥は言う。

国家漫画博物館で開催されている「葉宏甲百年記念展」では、葉宏甲(1923-1990)の漫画とアニメ、原画などが展示されている。