
にぎやかな夜市へ行けば小吃(B級グルメ)を食べたくなる。蚵仔煎(牡蠣入りオムレツ)、臭豆腐(発酵させた豆腐)、大腸麺線(モツ入り素麺)、黒白切(ゆでた豚モツの薄切り)など台湾の屋台料理が並ぶ。だが、食べ終えるとテーブルに残るのは大衆的なプラスチックや紙の器だ。地元食材を使った特色ある美食を、もっと美しい器でいただくことはできないものだろうか。
地理や歴史、文化などを背景とする生活習慣から、台湾のB級グルメは世界に知られ、その種類は実に豊富である。これらは各地域の味であり、台湾人の暮らしには欠かせないものだ。台湾伝統の庶民の味を食することで、観光客は台湾の文化に触れられ、旅は豊かになる。
しかし、料理はおいしさや彩り、香りの他に器も重要である。そこで政府交通部観光局は2015年に行った「小吃大器——美食器皿デザインコンペ」が大きな反響を得たのを受け、今年は「小吃大器——2016台湾特色小吃器皿デザインコンクール」を開催した。蚵仔煎、炒米粉(焼きビーフン)、臭豆腐、大腸麺線、刈包(角煮バーガー)、鶏肉飯、四神湯(モツ入り薬膳スープ)、珍珠奶茶(タピオカミルクティ)、焼仙草(仙草ゼリー)、黒白切という10品のために、ぴったりの器をデザインするというものだ。

交通部観光局が開催した「小吃大器——2016台湾特色小吃器皿デザインコンクール」は大きな成果を上げ、若者たちの知恵と創意が発揮された。
創意と美食の出会い
観光局の黄易成科長は、このコンクールが一つのきっかけになることを願っている。台湾伝統の屋台料理が若者の創意を通して食文化に融合し、食器や包装を通してそれぞれの料理の由来や物語を伝えることで魅力が高まる。夜市でもレストランでも使える食器が、これらの料理を豊かにし、観光客の記憶に残るものとなればと言う。
今回のコンクールは大学・短大のデザイン関連学科の学生を対象とし、若者が知恵と創意を発揮した。企画を担当した著名デザイナーの陳俊良は、「学生が実際に業者と接触することで、料理を盛り付けるというニーズにかなったデザインを考え、若いデザイン思考が夜市の屋台料理を改造していければ」と期待を込めて語る。夜市の屋台には、自分たちのロゴや包装や屋台をデザインする資金はない。しかし「もし100人の学生が一つずつ屋台をアドプトしてデザインを担当し、それぞれの屋台や食器、包装などをデザインしたらどうでしょう。地域の特色や雰囲気をデザインに取り入れれば、台湾の屋台料理も一味違ったものになり、台湾の特色になります」と言う。
コンクールには多数の応募があり、審査の結果、革新的でストーリー性があり、しかも実用的で市場性のある作品が選ばれた。受賞作は台湾の若者らしい生命力に満ち、クリエイティブな要素が取り入れられ、台湾らしさと文化を融合させて夜市のB級グルメの魅力を高めるものである。消費者から見れば、デザイン性の高いクリエイティブな食器を使うことで、屋台料理に新たな感覚が加わり、観光客にも良いイメージを残す。
デザイン面で、陳俊良は使い手への配慮を重視した。機能性、使いやすさ、おもしろさ、イメージなど、使用者のことを考えてこそ、地元の食文化と料理の質を際立たせることができる。
「小吃大器」コンクールで受賞した食器は「2016美食展」で披露され、台湾観光協会の頼瑟珍会長(右から2人目)が行政院の林錫輝副院長(中央)を案内して作品を鑑賞した。
優れたデザイン
金賞に選ばれた作品のテーマは٣H仔煎で、作品名は「٣H聞者」。国立台中教育大学文化クリエイティブ産業デザイン・マネジメント学科の朱芳瑩、劉静文、韓靚怡、邱靖雯の共同制作である。牡蠣の殻をイメージしたデザインについて劉静文は、「お客は蚵仔煎を食べながら、手に大きな牡蠣を持っているようなおもしろさを感じ、その体験が目を楽しませます」と説明する。器の底は丸みを帯びて盛り上がっており、スプーンを使わなくても料理を取りやすく、そこが柄になっているので、熱い٣H仔煎を入れて運んでも火傷の心配はない。実用的で安全、視覚的にも特色があるということで、金賞に選ばれた。
銀賞の作品は「脈脈香傳」、国立成功大学工業デザイン研究所の蘇媛媛がデザインした。テーマは鶏肉飯で、造形は中国建築の斗+}からイメージし、木を素材としている。手で持ちやすいように曲線のデザインとなっており、料理が盛られる面は大きく堂々としていて、鶏肉飯を際立たせ、印象付ける効果がある。
銅賞は四神湯のためにデザインされた「四神 事成」。実践大学工業製品デザイン学科の郜耿琳と羅子琇が共同でデザインした。受賞時に郜耿琳はこう話した。外国人が四神湯に触れる機会が比較的少ないのは、食材の色が全体に薄く、そのおいしさを引き立てるような器が使われていないからだと考えられる。そこでデザイン上、コントラストの強い色を用いることにした。器のデザインは清の乾隆帝の逸話にインスピレーションを得て、東西南北の四方をそれぞれ司る青竜、白虎、朱雀、玄武という神獣を参考に、青、白、朱、玄(黒)の四色を用いた。さらに四神湯を飲み終えると、碗の中に薬材の形が文字のように浮かび、漢方薬の「四臣」が健康をもたらすという乾隆帝の物語が表現されている。
金賞に輝いた「蚵聞者」は、国立台中教育大学文化クリエイティブ産業デザイン・マネジメント学科の朱芳瑩、劉静文、韓靚怡、邱靖雯の共同制作である。実用的で安全、視覚的にも特色がある。(劉静文提供)
B級グルメが華麗に登場
陳俊良の印象に残ったのは、タピオカミルクティのグラス「美濃——傘亮珍珍」だった。唐傘の形のグラスで、柄の部分はストローになっており、黒いタピオカが傘の模様のように見え、コースターに用いた美濃の花柄の布が頭紙のようだ。高雄美濃の唐傘から観光も推進でき、このデザインは世界で通用すると考える。
アイディアに満ちた「小吃大器」は、地元の文化と食を融合させ、屋台の食文化と生活の美を向上させる。若い創造力と庶民の味が融合して火花を散らし、視覚と味覚を通して台湾グルメの魅力を表現しているのである。
銅賞の「四神 事成」は、実践大学工業製品デザイン学科の郜耿琳と羅子琇の作品。デザインは清の乾隆帝の逸話にインスピレーションを得て、コントラストの強い色彩を用い、巧みな工夫によって深い意味が込められている。(郜耿琳提供)
銀賞の作品「脈脈香傳」は国立成功大学工業デザイン研究所の蘇媛媛がデザインした。鶏肉飯が盛られる面は大きく堂々としていて、料理を際立たせ、印象付ける効果がある。

コンクールを企画したデザイナーの陳俊良は、デザインが庶民の暮らしに入っていくことで、台湾の美食をアピールできると考えている。 (林旻萱撮影)