提供:Jimmy S.P.A.
LINEでは「美美(メイメイ)」のズバッとしたセリフのスタンプで気持ちを表し、リュックには「麻吉貓(もちにゃん)」のぬいぐるみストラップをつけ、手に持つのは「貓貓蟲 咖波(Bugcat Capoo)」とテイクアウト式ドリンクブランドのコラボレーション製品。週末になると「灣A麻吉(タイワニマル)」のぬいぐるみを抱きドラマチェックに勤しんだり、「囂搞(シャオガオ)」の動画をスクロールしては大笑いしたりする。これらキャラクターは私たちの日常生活に自在に入り込み、直球勝負よろしく感情をさらけ出してくる。その存在はまるで生活の相棒のようだ。
近年盛んに展開される版権イラスト(キャラクターIP)が、気づけば私たちの生活の一部となっている。キャラクターIPビジネスは無限のチャンスを生み、軽視できないのがその力強い文化発信力だ。世界の舞台でキャラクターのストーリーを伝える、これは多くのキャラクターIPブランドマネジメントをする者たちの夢でもある。
近年、台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エージェンシー(TAICCA)は台湾キャラクター‧ブランド‧ライセンシング協会(TCBLA)と手を組み、代表団を率いてライセンシングジャパンと韓国キャラクターライセンスフェアに参加した。多くの成果を上げ、海外経験を吸収した。(提供:TAICCA、TCBLA)
台湾のキャラクターIPに注目!
台湾のキャラクターIPは近年、国際的に存在感を示しつつある。台湾キャラクター‧ブランド‧ライセンシング協会(TCBLA)会長の鄭文福さんが例を挙げながら紹介してくれた。1998年に誕生した「九藏喵窩(DNA×CAT)」は白い目が特徴の可愛らしい猫で、このキャラクターのオンラインゲームとアニメが開発されている。2020年には日本の千葉テレビでアニメ放送がスタートした。これは日本のローカル局で放送された初の台湾アニメシリーズとなった。
「宇宙喵Kuroro(宇宙猫クロロ)」は、遠い惑星‧NGC6543(キャッツアイ星雲)からやってきた地球特派員だ。その愉快な宇宙観が、日本の児童書出版社‧ポプラ社との提携につながった。日本における戦略的ライセンスパートナーはテレビ東京(TXCOM)だ。
インターネット上で閲覧数2億回を記録した「茶葉少女」は、世界共通であるお茶の文化をもとに、台湾茶が萌え系の女の子として描かれ、友情や冒険物語が繰り広げられる。日本企業ともライセンスエージェント契約を締結した。
台北MRTの文化大使である「麻吉貓(もちにゃん)」は、オーブンから飛び出してきた餅でできた白猫だ。ファミリー市場で人気があり、日本、香港、中国では、多くのコラボレーションやイメージキャラクターとして商品化されている。
台湾オリジナルのキャラクターIPが世界の舞台に打って出る準備は既に整った。ここ数年、台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エージェンシー(TAICCA)はTCBLAと協力し、代表団を率いてライセンシングジャパンと韓国キャラクターライセンスフェアに参加しており、その参加資格をめぐっては熾烈な競争が繰り広げられている。TCBLAの事務局長‧彭愛萍さんの説明によると、TAICCAが設けた選考システムでは、招聘された海外の審査員のもと、ライセンス市場の受容性、好まれるスタイル、独自性が評価され、現地の市場に最も適したIPキャラクターが選ばれるという。これは確実に効果的な評価方法であるとして彭さんは「ここ数年、私たちはこの選抜システムを利用してキャラクターを海外に送り出してきましたが、点数の高いものは、現地の展示会でも良い結果を残しています」と話す。
台湾固有種の動物たちから着想を得た「灣A麻吉(タイワニマル)」。環境保護、持続可能性を結び付けているため、同様の理念を掲げる企業の協力が呼び込める。この夏、阿里山の茶農家とのコラボレーションで共同ライセンス商品を発売。地元の特徴を取り入れただけでなく、台湾の価値観も普及させる。(提供:林韻茶園、灣A麻吉)
染み込んだ「台湾風」
台湾の市場規模は大きくないため、キャラクターIPは世界を目標に据える必要がある。キャラクターIPについては、ローカル性があることが識別の重要なファクターだという見方がある一方、属する国の文化的特徴を取り去ったほうが世界各地で馴染んでいけるという意見もある。
双方の意見にそれぞれのメリットがあるとして、彭さんは「キャラクターIPのデザインやプロモーションに台湾的要素を取り入れることは不可能ではないが、戦略とテクニックが必要だ」と言い、「灣A麻吉(タイワニマル)」の例を挙げ説明してくれた。台湾の固有種である梅花鹿、タイワンツキノワグマ、台湾犬、諸羅樹蛙(アオガエルの仲間)、タイワンヤマネコをモチーフにしたキャラクターIPのデザインを考えたAOYI BRAND DESIGN社は、かつて模索を重ねていた時期もあった。だが多くの海外での経験をもとに、ぬいぐるみを主軸に切り替え、日本の「すみっコぐらし」のような癒やし系の人形としてキャラクターIPを位置づけることにした。くわえて、環境保護、土地保全、地球愛というコンセプトから、同様の理念を掲げる企業の協力を呼び込み、独自の道を切り開いてきたという。
絵本作家‧幾米(ジミー)のブランドマネジメントを担うJimmy S.P.A.の総経理‧李雨珊さんは、ブランドポジショニングを「読書‧旅‧生活」としている。中でも「生活」については、特に台湾の精神と結びつけることができるとし、「台湾社会がこんなにも多くの課題や変化を経験した今、『平凡だが簡単ではない』ことこそ台湾が本当に望んでいるものだと、私たちは実のところ明確にわかっています」と話す。
「自信を持って自分らしくあれ」と打ち出した、豊満でファッショナブルな女性キャラクター「美美(メイメイ)」について、作者のH.Hさんはこう語る。「美美には情熱、自分を出す勇気、不屈の精神といった台湾らしさを込めました」
注目されるべきは外見のイメージではなく、キャラクター設定の部分かもしれない。だがそれぞれに台湾と少し関係がある。つまり各キャラクターがどことなく「台湾風」なのだ。
TCBLA事務局長‧彭愛萍さんの説明によると、台湾のキャラクターIP市場は現在成長段階にあり、可能性は無限大だ。一緒に写るのは台北MRTの文化大使「麻吉貓(もちにゃん)」。
美美の逆襲
2013年、インターネット上に、常にズバッとした物言いでネット世界の虚構を鋭く突く豊満な女性「美美(メイメイ)」が登場した。流行りのやせっぽちではなく、肉感的な美しさを持つお洒落に敏感なキャラクターだ。
美美は、シュールな社会観察家であるH.Hさんがセルフメディアで創作したキャラクターだ。「美美の魂の半分は、実は私自身なんです。昔、私は美美のように太っていて、好きなのは絵を描くことだけでした。毎日教室にいて、仲が良いのは女の子ばかり。それに私は女の子みたいにおっとりしていたせいか、悪口もたくさん言われました」とH.Hさんは話す。そんな経験も今は昔、現在は自分のスタイルでストーリーを生み出す勇気と強さを手に入れた。「美美を通して、現在の社会における外見に対する不平等を描きたいとずっと思っていますし、美美が同様の経験をしている人々の慰めになればとも願っています」
美美の誕生から11年、初期の美美はもっと攻撃的だったとH.Hさんは自身の作品を分析する。今の美美は、あけっぴろげな所は変わらないものの、より大人な対応ができるようになったという。「例えば自虐的になることで、皆に楽しんでもらうだけでなく、その出来事について考えてもらったり反省を促したりできています」
インターネット上で閲覧数2億回を記録した「茶葉少女」は、長編ウェブ漫画でファンを開拓し、その名を知られるようになった。
キャラクターIPを支えるエージェンシー
当初、H.Hさんのフェイスブックでは、美美のおかげでフォロワーが1年で100万人を突破し、現在は167万の「いいね!」を獲得している。「今のところ広告経由でなく自然に投稿を見てもらっています。広告は載せていないんですよ」と話す美美のエージェンシー‧IN2 Creationでディレクターをする廖珮吟さんは、美美の成長にずっと寄り添ってきた。
著作権保護に加え、廖さんは商業性のあるキャラクターIPの運営には独自性、多様性、継続性が必要だと言う。独自性とはまずブランド‧キャラクターのコアバリューを確立することだ。廖さんは、美美が美容医療やダイエットのイメージキャラクターになることはあり得ないと笑う。「私たちはまた、美美の装い、お洒落への向き合い方、ストーリーの背景から多様な方向性を創造し続けると同時に、市場や消費者からのフィードバックを謙虚に受け入れ、戦略を修正しています」
1つのキャラクターIPの寿命は5年程度であるため、ファンを惹きつけるには継続的な話題作りとアップデートが欠かせない。「この11年、私たちは2年を1フェーズとしてマーケティングテーマを設定してきました」と廖さんは言う。 第1段階は、熱血でひとりよがり、歯に衣着せぬ物言いをする美美で、テーマは「逆襲」だった。第2段階のテーマは「恋愛」で、美美には眼鏡男という恋人ができた。第3段階は「友達」で、女性の友情や内輪トークを描くことに重点を置いた。第4段階は「人間の本質」がテーマとなり、美美が心の内のあれこれについて語り、計算高さは人間の知恵なのだと伝える。現段階のテーマは「自分を解き放つこと」だ。「性別に関係なく、ただ自分自身の、一番真実で自信を持てる部分を守ること。他人の目や社会の枠組みなど気にしないこと」だという。
継続的なテーマ設定と露出に加え、美美の女性としての心意気は多くのイメージキャラクターとしてのオファーにつながった。『VOGUE』誌や『ELLE』誌のコラムでのコラボレーションに加え、ファッション界にも進出。ニューヨーク‧ファッション‧ウィークでは、デザイナーの周裕穎さんとコラボレーションしてブランド「Just In XX」のショーに登場し「美の基準はひとつだけではない」と伝えた。2021年、髪を長いツインテールにした美美は、日本のバーチャルアイドル‧初音ミクとコラボレーションした。2017年には、日本の人気芸能人でインスタグラムの女王‧渡辺直美さんからの招待で、台北で体験型展示イベント「渡辺直美展 Naomi’s Party」に登場した。その中の企画「美美と渡辺直美の台湾でのシェアルーム」では、台湾と日本の共に豊満な二人の有名女性のコラボレーションという国を超えたサプライズとなった。「直美さんと美美には似たブランド価値があるため、この国境を越えたコラボレーションは台湾と日本の文化交流として成功したと言えるでしょうね」と廖さんは話す。
H.Hさんが描く美美は、あけっぴろげな性格で毒舌も吐く。恋人‧眼鏡男との日常のリアルで自然なやりとりが、インターネットユーザーに愛されている。(提供:IN2 Creation)
絵本から得る癒やしと元気
ジミーは中華圏で最も親しまれている絵本作家の一人だ。氏の出版物は20以上の国と地域でライセンス契約されており、その総数は200を超える。二次的著作物はミュージカル、舞台芸術、映画、アニメーション、パブリックアート、インタラクティブなVR技術などに利用され、日本の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「北アルプス国際芸術祭」などにも出展している。こうしためざましい活躍を後押しするJimmy S.P.A.の創業者‧李雨珊さんは、会社設立当初を振り返り「動機のひとつは、ジミーの作品から得た感動や安らぎを皆さんと分かち合いたいということでした」と話す。
李さんは、イラストはイラストでもジミーのものは一般的なキャラクターIPとは異なり、ジミーが創作するのは絵本なので、物語もシーンもあり、多くのキャラクターが登場すると説明する。また、アーティストのマネジメントとも異なるのは、ジミーブランドで人目に触れるのは作品で、ジミー自身ではないとし、「私たちが会社を設立したのは、ジミー作品をブランドとして運営するためでした」と言う。さらに、ジミーの絵本は大人向けだ。読者層は18歳から35歳と設定されており、その7割が女性だ。こうしてジミーブランドは「大人の世界の童話」として歩み始めた。
「私たちの強みは、ストーリーとそこに潜む精神にあります。ですからビジュアルイメージに加えて、ストーリーを目に見えるものにしなければならないのです」と李さんは話す。そのため、Jimmy S.P.A.は、作品利用を通じてストーリーをより広く知ってもらおうと努めている。ブランディングをする中で、ジミーの作品は、映画、テレビ、エンターテインメント作品へと姿を変えてきた。例えば、映画化された『星空』は韓国の釜山国際映画祭で、アニメーション『微笑的魚(邦題:ほほえむ魚)』はドイツのベルリン国際映画祭で受賞した。2019年にはスペインで開催された特別展と講座が好評を博した。
ヨーロッパではさらに数都市を回る予定だったが、世界はコロナ禍に見舞われる。パンデミックを機に李さんは、デジタル‧コンテンツの開発を加速させ、各国でマネジメント‧エージェンシー探しをするなど、ブランド‧アプローチの次の段階を積極的に考え始めた。そして日本のライセンシングジャパンの参加メンバーに2年連続で選ばれ、李さんはジミーの数多くの作品の中から、手始めに『月亮忘記了(邦題:君といたとき、いないとき)』を選び、再び世界に打って出るための足がかりとした。
日常生活に溶け込んで
Jimmy S.P.A.のオフィスに一歩足を踏み入れると、生活‧服飾雑貨、文房具、ギフトなど、ジミーの様々な公式グッズが並んでいる。昨年、ジミー作品の『月亮忘記了』は日本のサンリオのハローキティとコラボレーションをした。小さな坊やとハローキティが月の上に寝そべっている絵を見ると、絵本でお馴染みのシーンが新たに描かれていることがわかり、実に癒やされる。「この案件は非常に興味深く、キャラクター同士のコラボレーションは初めてで、私たちにとって画期的なことでした」と李さんは振り返る。
長年にわたり、パブリックアートへの参加はジミーブランドの特色かつ強みとなっている。李さんは、「ジミーには、普通のキャラクターIPにはないストーリーや情景、隠れた哲学があります。私たちはその長所を広げ、短所を長所に変えています」と語る。ジミーの故郷は宜蘭だ。宜蘭県政府との協力で設けられた「ジミー広場」と「空飛ぶ汽車」は、観光客に宜蘭で是非体験してもらいたいスポットだ。Jimmy S.P.A.はまた、新北メトロ‧淡海ライトレール緑山線からの依頼で、パブリックアートと列車のデザインを手がけた。台東県の臨海にある原住民の集落‧比西里岸でも作品展示を楽しめるし、台北市信義区の一角には、走ることのないムーンバスが佇んでいる。
ジミーの作品は台湾の生活風景となっただけでない。2015年には李さんが自ら「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」のキュレーターである北川フラム氏に連絡したことで、ジミーの大地の芸術祭への旅が始まった。田んぼや畑を舞台に、芸術が人と自然の架け橋となり、JR飯山線の土市駅と越後水沢駅に作品「Kiss & Goodbye」が設置された。作品制作だけでなく、絵本『忘記親一下(邦題:幸せのきっぷ)』の出版、現地での関連商品販売、台湾の風尚旅行社との提携によるミニツアーといったブランド展開を狙う各種イベントが計画された。
芸術祭に切り込んだ企画は好評を博し、チームは2018年も芸術祭に参加。そしてコロナ禍を経た今年、ジミーとチームは再び新潟へ向かった。今回のアイデアは「Kiss & Goodbye - 忘れられた大切な思い出」だと李さんが興奮気味に教えてくれた。ジミーは土市駅と越後水沢駅を模して、両駅の傍に郵便受けのように佇むミニチュアの駅を制作した。チームは事前に地域住民から大事にしている品々を集め、長年思い返されることのなかった大切な思い出として展示した。ジミーの作品内で繰り返し伝えられる、過去の素晴らしさを忘れないでという思いがあることにも気づかされる。
2025年、ジミーブランドは25周年を迎える。絵筆で私たちの心を癒やし、ブランドで世界とつながる。ジミーはいつだって私たちの日常の中に溶け込んでいるのだ。
自分の気持ちを乗せられるLINEスタンプ、美美のユーモラスで単刀直入な物言いのスタンプは大人気だ。(提供:IN2 Creation)
美美と日本のインスタグラムの女王‧渡辺直美さんのコラボレーション。共に豊満な二人の有名女性がタッグを組み登場したことで、台湾と日本の文化交流が成功した。(提供:IN2 Creation)
美美とバーチャルアイドル‧初音ミクがコラボレーションした際のシリーズ商品。別のキャラクターへの扮装は美美のお得意だ。(提供:IN2 Creation)
スマートホンなどのアクセサリーは、若者が自分のスタイルを表現できるアイテムだ。美美は耐衝撃スマホケースのブランド‧RhinoShieldとコラボレーションした。(提供:IN2 Creation)
Jimmy S.P.A.は、作品を映画やミュージカル、舞台化することで、より多くの人たちにストーリーを広める試みを行っている。写真は『星空』と『微笑的魚(邦題:ほほえむ魚)』の映画ポスター。(提供:Jimmy S.P.A.)
ジミーの『月亮忘記了(邦題:君といたとき、いないとき)』とサンリオの「ハローキティ」とのコラボレーションは、ジミーブランドにとり初のキャラクター同士のコラボレーションだと話す李雨珊さん。「これは二次創作。20年以上続いているジミーブランド、キャラクターに新たな命を吹き込む時が来た」
2024年の作品「Kiss & Goodbye - 忘れられた大切な思い出」。ジミーの作品内で繰り返し伝えられる「過去の素晴らしさを忘れないで」という思いのように、長年思い返されることのなかった大切な思い出を小さな舞台に展示した。(提供:Jimmy S.P.A.)
MRTのホーム壁面から淡海ライトレール緑山線のホームのインスタレーションまで、ジミーの作品には物語、キャラクター、シーンがある。パブリックアートへの参加はジミーブランドの特色であり優位性だ。(提供:Jimmy S.P.A.)
2015年、ジミーは日本の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」で「Kiss & Goodbye」を制作した。芸術は人と自然をつなぐ架け橋となり、現場で人を見てその人たちの姿を知ることが、ブランドマネジメントに役立つと李雨珊さんが語るように、現地で住民や来場者と交流した。(提供:Jimmy S.P.A.)