国際市場から続々と朗報が
近年は、海外市場から台湾漫画に関する朗報が届くようになった。
例えば2023年に出版された若い漫画家・高妍の『緑之歌(緑の歌-収集群風-)』は、日本のアーティストである細野晴臣の楽曲や村上春樹の作品をモチーフとしている。この作品は最初は自費出版で、わずか32ページの短編だった。だが、繊細な物語と絵が特徴のこの作品は、思いがけず細野晴臣氏の目に留まり、ドキュメンタリーフィルムへの参加を依頼された。さらに村上春樹氏にも絵が評価され、氏の新刊『猫を棄てる 父親について語るとき』の表紙を依頼されたのである。こうして高く評価されたことから、高妍は短編作品を上下二巻の長編へと改編し、台湾と日本で同時に発売すると、日本では「このマンガがすごい!2023オトコ編」の第9位に輝いたのである。
もう一つ、漫画家・小島の作品『獅子蔵匿的書屋(本屋に潜むライオン)』は、プロ棋士、貸本屋、精神疾患などをテーマとした作品だ。そのユニークな物語がフランス人をひきつけ、フランスの少なからぬ出版社から版権取得のオファーがあった。そして最終的に、20代の若い兄弟が版権を取得し、彼らが創設した出版社の最初の作品となったのである。
台湾の漫画が海外の市場でこれほど受ける理由は、世界の漫画市場から検討することができる。世界の漫画市場は大きくいくつかに分類できる。日本の漫画(マンガ)、アメリカの漫画(コミック)、ヨーロッパの漫画(バンド・デシネ)などだ。このほかに、最近台頭してきたものとして、韓国のウェブトゥーン(縦読み漫画)や、テーマの深さと芸術性の高さを強調するグラフィックノベルといったものもある。
これらの中で、日本の漫画は台湾だけでなく世界的にも強い競争力を持つが、漫画を「第9の芸術」とするフランスでは、市場が大きいため多くの出版社が日本以外のアジアの漫画市場にも注目している。そうした中で、日本に次ぐ品質を持つ台湾の作品が注目されつつあるのである。
台湾の漫画が日本の漫画に似すぎているのは、仕方のない原罪だと言われてきた。かつて半世紀にわたって日本に植民地統治され、地理的にも文化的にも近いからである。また、台湾は島国であることから、もともと外来の文化を受け入れやすい。研究者は、台湾漫画の第一波黄金期においても日本の漫画の影響が見られると指摘する。
長年にわたって台湾の漫画やアニメを研究している台湾師範大学台湾語文学科の劉定綱助教は、台湾の漫画は、日本の漫画と同様にストーリー性を重んじると指摘する。「起承転結を重視し、物語に意外性を持たせながら、前後の因果関係を明確にしているのです」と言う。
しかしその一方で、台湾の漫画はヨーロッパのバンド・デシネに見られるような、画面の雰囲気やイメージの創出にも力を注いでいると劉定綱は指摘する。
形式上のこのような特質は、台湾国内の市場メカニズムがまだ完全に成熟していないことに起因しているかもしれない。主流の型にはまったスタイルというものがまだ形成されていないのである。また蘇微希は、2000年以降に台湾の大学・短大に多数のビジュアルデザイン・動画学科が設けられたことも要因ではないかと考えている。
こうした背景に加えて政府による漫画助成金が投入されたことによって、美術学科出身の多くの若者が漫画家を目指すようになった。例えば、『暫時先這様(しばらくこのままで)』の作者、陳沛珛は本来はイラストレーターだったが、漫画助成金が得られることから漫画を描くようになり、イラストレーターと兼職することとなった。同じく漫画家の艾姆兎、左萱、61Chi、曾耀慶、それにベルギーのレイモンド・ルブラン賞を受賞した呉識鴻は、いずれも師範大学美術学科出身で陳沛珛の同級生である。以前の漫画黄金期の作家の多くが復興美工出身だったことを思い出させるエピソードだ。
ストーリーテリングと美術的表現に長けているという点は、台湾漫画の特質と言える。蘇微希によると、台湾の漫画家は物語や個人的な好みで選択しつつ、商業市場と芸術性のバランスを取り、台湾文化の主体性を際立たせ、これによって海外市場への道を開いているのである。
漫画家たちによるリレー創作。(文化内容策進院提供)