書店に一歩入ると、すぐに目につくところに財テク関係の書籍が並んでいる。しかし、これらは本当に読む必要があり、役に立つのだろうか。相矛盾するさまざまな情報があふれる中で、いったい誰を信じればいいのだろう。
台湾大学財務金融研究所の邱顕比教授は「財テクは自転車に乗る練習と似ています。大原則さえ掌握すれば、乗れるようになるのですから、常にそのことばかり考える必要はなく、新型の自転車が登場するたびに乗り方を修正する必要もありません」と言う。では、財テクの大原則とは何なのか。以下に簡単にまとめてみた。
一、切りつめて残すご存知だろうか。ここ3年の間に、我が国では400余りの海外投資信託(ファンド)が認可され、そのうち約140以上のファンドの年間平均リターンは15%を超えている。1996年初から99年末まで台湾の株価指数は年間平均17%延びており、1年の定期預金の利率の3倍となっている。
計算してみよう。毎日100元、月に3000元を定期定額の形で上述の平均リターン15%の株やファンドに投資すれば、20年後には幾らになるだろう。答えは454万元だ。1日100元というのは難しいだろうか。ほとんどの人にとって、決して難しいことではないはずだ。毎朝15分早く起きて、朝食を自分で作りさえすれば、すぐに100元ぐらい浮くだろう。
しかし、最近シティバンクが台湾で行なった調査によると、38歳以上で、まだ財テク・プランを立てていない人のうち、4割以上が「お金が足りない」ために財テクをしていないと答えている。彼らのお金は、どこへ消えてしまうのだろう。
「毎月の収入の15%を先に投資用に取り、残りを生活費やさまざまな支出に使うようにすればいい」というのが、ある財テク専門家の提案だ。目標を達成するために、専門家は月々の住宅ローンの支払を収入の25%以下に抑えるよう提案している。月収10万元の家庭の場合、金利8%、期間20年、元本と利息を同時に返済する計算にすれば、ローンの総額は300万元を超えないようにする必要がある。
夫婦共働きで月収が合せて10万元の場合、投資に15%、ローンに25%を差し引くと、残り6万元で一家3〜4人の生活を支えなければならない。衣食住に、子供のベビーシッターや塾の費用もある。確かにやや厳しいが、どんなに苦しくても「投資の元手」に手をつけてはいけない。とにかく「切りつめ、残す」努力をしてこそ、より良い明日を迎えられるのである。
一方、月収5万元で50万の車を買いたいと思っている人や、懐が寂しいのに友達と海外旅行に行きたいと思っている若者は、まずあらためて算盤を弾いてみるべきだろう。こうした「衝動型」「発散型」あるいは「見栄っ張り型」の消費習慣を早めに改めてこそ、お金が貯まるというものだ。
二、投資は少しでも早く始める財テクは、お金持ちのゲームなのだろうか。市販の書籍の多くは「努力してお金を稼ぐ」ことを第一歩としているが、頑張って稼げばお金が増えるというものではない。財テクを始めるに十分な収入が得られるようになった、と感じられるまで待っていたのでは、いつまでも始められない。財テクの驚くべき点は、時間の蓄積が複利を生むことなのである。10%の複利で計算すると、1万元が2万元になるには7年半かかるが、2万が3万になるには5年、3万が4万になるのは3年で済む。時間の蓄積によって、元手を増やすのはたやすくなるのである。
スイス銀行台北支店の劉台芬副ディレクターは次のような例を挙げる。Aさんは20歳から投資を始め、毎年10万元を15年間、リターン12%で投資、総額150万を投じた。その後は投資を止め、ただ複利が付くままにして放っておいた。Bさんは36歳から投資を始め、毎年10万を30年間、合計300万を投資した。二人が65歳になった時、30年も投資したBさんは元利合せて約2700万なのに比べ、若い頃15年間だけ投資したAさんの方は1億2500万と、Bさんの5倍の額になっているのである。
三、株を買っても株価は気にしない財テクを始める決意をしたら、どこから始めるべきなのだろう。
最も人気のある株式市場を見ると、現在国内では470社余りが上場、300社近くが店頭取引されており、国内型ファンドは260余種、海外型ファンドは400余種もある。インターネットで直接アメリカの株や債券を売買することもできる。その中から何に投資し、いつ、どの価格で投資するべきか、考えるだけで頭が痛くなる。
専門家は、初心者の場合、まず定期定額の投資信託から始めるべきだと提案する。初心者は慣れていないので、直接株を買うと株価変動に心を惑わされるため、安定したファンドを選び、専門のファンド・マネージャーに任せた方がいい。財テク関係のホームページでは、定期的に各ファンドの業績などのランキング情報を提供しているので参考になる。
専門家が注意を促すのは、ファンドの場合、3〜5年の長期投資で初めてリターンが大きくなり、リスクも低減されるという点だ。従って1ヶ月や1四半期だけの業績を見るのではなく、ここ1〜2年の業績を参考にする。特に業績の起伏の大きなものや、マネージャーがしばしば交代しているようなファンドは避けた方がいい。
株に投資する場合は、前途有望な業種で、収益や経営の状況が安定している正統派の企業なら、どれも悪くない。情報産業は成長が見込めるため、半導体の聯電(UMC)や台湾セミコンダクターなどは良い投資対象だ。従来型産業の台湾プラスチックや南亜、遠東紡織なども経営基盤が安定しており、株価収益率が妥当な時点で購入すれば、リスクを抑えられる。
だが多くの人が不安に感じるのは、一時「株王」と言われた国泰人寿(生保)の株価が、一株1900元という超高値から今は80元以下にまで下がったことだ。業績も良い企業の株価が、なぜこのように変動したのだろう。専門家によると、台湾では80年代には上場企業が100社余りしかなく、なおかつ大量のホットマネーが入ってきたため、不合理な状況が生じていた。しかし、ここ数年は上場企業の数も増え、情報は透明化し、投資対象も分散してきたため、このような暴騰・暴落が生じる可能性は減少している。
忘れてはならないのは、ファンドでも株でも、一時的な起伏に惑わされてはならないという点だ。四半期毎に投資対象の経営状況や産業の先行きを確認し、ファンダメンタルズに大きな悪化が見られない限り、そのまま投資を続ければ良い。調査によると、海外の億万長者の大多数は株を持っているが、その4割の人は1年に一度も株を売買していない。途中で売買すると、時間の累積による複利効果が中断されるからである。
台湾では、いわゆる財テク専門家の多くが早くからの投資を進めながら、矛盾したことに、株の頻繁な売買により差額を儲けることを勧めている。配当と実質価値の上昇だけに甘んじられなければ、時間が生む複利効果は得られず、また株価変動によって情緒までかき乱されてしまうだろう。
投資は長期的なもので、40年を単位に論じても長すぎることはない。邱顕比教授は、投資によって急速に大きな利益を上げるには「運」「苦心」「冒険」が欠かせないと言う。だが、運は誰にも掌握できない。邱教授は、決して早く大儲けしようという欲を出してはならないと言う。年間15%以上のリターンを期待するのは現実的ではないのである。
四、リスクを分散する広い意味で財テクとは賢いマネーマネジメントを指し、そこには貯金、借金、消費、投資、保険、節税など各項目が含まれる。投資以外の項目では積極的に財産を増やすことは出来ないが、生活経済の安定には重要なものばかりだ。周囲を見渡せば、高い収入を得ていた人が、病気や退職後、急に生活が苦しくなることもあるし、財産のある人が何の節税対策もしていなかったために、突然亡くなった後、すべてを国税局に持っていかれてしまうこともある。人生において経済的安定が重要だと考えるなら、今日は少し時間を取って、自分の財務について考えてみてはいかがだろう。