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産業イノベーション

著作権の金鉱を掘る――

著作権の金鉱を掘る――

台湾文学の底力とドラマ化のモチベーション

文・蘇俐穎  写真・鏡文學提供 翻訳・山口 雪菜

1月 2023

大学で映画を学び、20年余り記者を務めた董成瑜は、これまでの経験を活かしてコンテンツ産業に参入した。

台湾ドラマが大きな流れを起こすようになり、動画配信サービスもますます充実してきた。視聴者はコンテンツに飢え、市場は復興し、多くの人材がこの産業に引き付けられている。こうしてニーズは拡大する一方だが、ドラマの素材やストーリーはどこから来るのだろう。

興行成績は問題とならない。しかし、これを産業ととらえるなら、視聴者の好みや視聴の習慣、市場のニーズやマーケティングを考慮しないわけにはいかない。「私たちはしばしば映像『作品』と言いますが、実際には『製品』と呼ぶべきなのです」と盧俊偉は語り、思考の大きな転換が必要だと言う。

だが、映像作品の商業化と言っても、大衆におもねるのではなく、芸術性とおもしろさを兼ね備え、しかもグローバルな手法で表現する必要がある。「ヘンリー‧ジェイムズやマーガレット‧アトウッド、イアン‧マキューアンなど、ノーベル賞レベルの名作家の作品も幾度も映画化され、そのたびに好評を博しています」と外国の小説を愛読する董成瑜は言う。台湾のローカル文化はコンテンツとしてプラスになる。「例えば台湾の廟の文化などにはグローバルな市場があります。ただ、ドキュメンタリーのように直接客観的に表現するのではなく、そこにも転換が必要です」と盧俊偉は言う。

鏡文学では、著作権の二次使用開発という角度から、物語や脚本に一定の選考基準を設けている。「良い物語には魅力的な人物が必要であり、衝突も起きなければなりません。ストーリーは文学的な独り言のように立ち止まってはならず、前へ進む必要があります。また、読者に愛されるだけでなく、映像制作者を感動させられなければ、映像化のモチベーションは高まりません」と董成瑜は言う。

よい原作を生み出すために、編集者は翻案の角度からもアドバイスしていくことで、原作者は「一文字も変えてほしくない」というこだわりを捨てられる。ひとつの小説を、6回、7回と修正することも少なくないと董成瑜は言う。

鏡文学は、親会社である「鏡伝媒」のメディアリソースを活かし、率先して強力な提携プランを打ち出した。それにより本来は筆鋒鋭いジャーナリストが美しい文章を書く作家になったり、あるいはメディア業界で蓄積した人脈を通して紹介やマッチングを進め、作者が執筆を始める前からインタビューを手配することもある。「家の中で頭だけで考え、外国の作品を参考にしたり、ステレオタイプのイメージを抱くより、実際にフィールドワークを行なった方が、リアルで地に足の着いた作品が書けるでしょう」と董成瑜は語る。

台湾文学館の林巾力館長は、映像化を通してより多くの人が台湾文学に触れる機会を得ると考えている。

世界へこぎ出す

国際的なストリーミングサービスのリソースが台湾にも注がれるようになり、台湾の映像産業は強い追い風を受けるようになった。世界情勢は変化し、人材が戻ってきて、台湾は国際社会からも注目を浴びるようになっている。これらを追い風として帆を揚げ、世界市場という大海原に出ていくことこそ、台湾の映像業界の次の重要な目標である。

海外の市場を開拓するために、文化内容策進会は積極的に海外の見本市に参加している。東南アジア、中南米、ヨーロッパなど可能性のある市場を優先的に訪れており、現在すでにヨーロッパ最大の国際ドラマ見本市Series ManiaとMOUを交わし、台湾はアジア初の長期パートナーとなった。

鏡文学では、韓国にターゲットを絞って積極的に作品を売り込んでいる。「韓国の映像産業はすでにアジアのトップで、コンテンツへのニーズは大きいのですが、長年発展してきたため多かれ少なかれ壁を感じていて、異文化からの刺激を求めています」と董成瑜は分析する。

「台湾で最も尊いのは創作の自由があることです」と董成瑜は言う。韓流が世界を席巻していることから分かる通り、国内の市場規模や言語の使用人口などは、産業発展を阻害するものではない。自由に声をあげられる台湾の環境は、創作者にとって大きな力となる。機会を利用して積極的に海外と交流し、創作の質を高めていけば、「台流」はこれからも広がっていくことだろう。

公共テレビのベテランプロデューサー徐青雲は、『茶金 ゴーゴールドリーフ』で大きな成功をおさめ、客家語ドラマの内容をさらに深めた。(林旻萱撮影)

動画配信で変わるコンテンツ

2016年に有料の動画配信サービスが台湾にも次々と進出し、国内の映像産業を大きく変えた。制作の規格は向上し、物語の題材や脚本も進歩した。ストリーミングで視聴者は分衆化し、物語が良く、オリジナリティがあれば視聴率は取れるようになった。小説のほかにノンフィクションやSNS上の文章、インフルエンサーなどもドラマ化の対象とされるようになる。

台湾には数々の魅力的な物語がある。「でなければ、これほど多くのドラマや映画は制作できません」と公共テレビプロデューサーの徐青雲は言う。職業をテーマとした『做工的人 WORKERS』や『村裡来了暴走女外科(Mad Doctor)』、SFの『你的孩子不是你的孩子(子供はあなたの所有物じゃない)』、歴史ドラマの『斯卡羅 SEQALU:Formosa 1867』『茶金 ゴールドリーフ』などはいずれもここ数年好評を博した作品だ。

『茶金』のプロデューサーを務めた徐青雲は、「客家の伝統産業に関するドラマはすでに多数作られていますが、今回は、晴耕雨読の暮らしを描いた淡白な物語ではないものを作ろうと思いました」と説明する。そうして作られた『茶金』は、新竹北埔の茶商である姜阿新を主人公とし、戦後間もない台湾の茶貿易をテーマとする。初めて客家語の海陸腔と呼ばれる方言を用いたほか、壮大な歴史的シーンや繊細な感情表現も注目された。さらに観光スポットも取り込み、周辺グッズはドラマ配信後も長く売れ続け、最近では最も成功したドラマ化作品とされている。

原作は小説だけに限らない。散文やノンフィクションなども、映像化の可能性を秘めている。(林旻萱撮影)

出版の終点は二次使用の起点

映像産業の変化を見て、創作者や出版業者もコンテンツの価値をあらためて認識し始めた。「それまで私たちにとって、本の出版は一つのゴールでしたが、著作権の二次使用が盛んになり、本の出版後に十数種の版権取引が可能になったのです」と話すのは鏡文学総経理の董成瑜だ。一冊の本を、電子書籍、オーディオブック、漫画、テレビドラマ、映画、演劇、ゲームなどへと展開でき、原作著作権の可能性は無限に広がる。

こうした発展の可能性を目にして、著作権の二次使用に積極的に取り組む鏡文学では創作プラットフォームを設けて出版社を設立し、優れた作家を集め始めた。編集チームはプラットフォームから優れた作品を選んで出版し、原作が完成したら、その著作権使用の機会を積極的に求めていく。2018年から、鏡文学は「百万映像小説大賞」を開催し始めた。受賞作は優先的に映像化するというものだ。2023年に公開予定で、すでに注目されている『八尺門的弁護人』は第1回の受賞作を映像化したものだ。

文化内容策進院も関連政策を打ち出し、創作者、出版業界、映像業界の連携を促進している。文化内容策進会は毎年、出版側から原作の候補を募り、映像作品の出資者やプロデューサーによって「翻案の可能性のある50作品」を選出している。著作権の二次使用が決まれば報奨金を出して作業を加速させる。また、文化内容策進会はオンラインで「IP Meetup」プラットフォームを設け、作者または出版社が自ら出版物や漫画、映像作品、ゲームなどのコンテンツを紹介する場を設け、これによって著作権二次使用の機会を増やしている。

鏡文学が原作からドラマまで自ら手掛けた『八尺門的弁護人』。原作の小説は「百万影視小説大賞」の第1回受賞作品である。

グローバルな言語で語る

このように素材には事欠かないが、「どのような要素があれば良いドラマができるのか」と文化内容策進会副院長の盧俊偉は問いかける。これは非常に難しい問いであり、産業の趨勢分析を行なう文化内容策進会でもこれを研究しており、業界でもさまざまな見方がある。

映像作品を芸術創作ととらえるなら、作品は監督個人の意思や理念を表現すればよく、視聴率や興行成績は問題とならない。しかし、これを産業ととらえるなら、視聴者の好みや視聴の習慣、市場のニーズやマーケティングを考慮しないわけにはいかない。「私たちはしばしば映像『作品』と言いますが、実際には『製品』と呼ぶべきなのです」と盧俊偉は語り、思考の大きな転換が必要だと言う。

だが、映像作品の商業化と言っても、大衆におもねるのではなく、芸術性とおもしろさを兼ね備え、しかもグローバルな手法で表現する必要がある。「ヘンリー‧ジェイムズやマーガレット‧アトウッド、イアン‧マキューアンなど、ノーベル賞レベルの名作家の作品も幾度も映画化され、そのたびに好評を博しています」と外国の小説を愛読する董成瑜は言う。台湾のローカル文化はコンテンツとしてプラスになる。「例えば台湾の廟の文化などにはグローバルな市場があります。ただ、ドキュメンタリーのように直接客観的に表現するのではなく、そこにも転換が必要です」と盧俊偉は言う。

鏡文学では、著作権の二次使用開発という角度から、物語や脚本に一定の選考基準を設けている。「良い物語には魅力的な人物が必要であり、衝突も起きなければなりません。ストーリーは文学的な独り言のように立ち止まってはならず、前へ進む必要があります。また、読者に愛されるだけでなく、映像制作者を感動させられなければ、映像化のモチベーションは高まりません」と董成瑜は言う。

よい原作を生み出すために、編集者は翻案の角度からもアドバイスしていくことで、原作者は「一文字も変えてほしくない」というこだわりを捨てられる。ひとつの小説を、6回、7回と修正することも少なくないと董成瑜は言う。

鏡文学は、親会社である「鏡伝媒」のメディアリソースを活かし、率先して強力な提携プランを打ち出した。それにより本来は筆鋒鋭いジャーナリストが美しい文章を書く作家になったり、あるいはメディア業界で蓄積した人脈を通して紹介やマッチングを進め、作者が執筆を始める前からインタビューを手配することもある。「家の中で頭だけで考え、外国の作品を参考にしたり、ステレオタイプのイメージを抱くより、実際にフィールドワークを行なった方が、リアルで地に足の着いた作品が書けるでしょう」と董成瑜は語る。

世界へこぎ出す

国際的なストリーミングサービスのリソースが台湾にも注がれるようになり、台湾の映像産業は強い追い風を受けるようになった。世界情勢は変化し、人材が戻ってきて、台湾は国際社会からも注目を浴びるようになっている。これらを追い風として帆を揚げ、世界市場という大海原に出ていくことこそ、台湾の映像業界の次の重要な目標である。

海外の市場を開拓するために、文化内容策進会は積極的に海外の見本市に参加している。東南アジア、中南米、ヨーロッパなど可能性のある市場を優先的に訪れており、現在すでにヨーロッパ最大の国際ドラマ見本市Series ManiaとMOUを交わし、台湾はアジア初の長期パートナーとなった。

鏡文学では、韓国にターゲットを絞って積極的に作品を売り込んでいる。「韓国の映像産業はすでにアジアのトップで、コンテンツへのニーズは大きいのですが、長年発展してきたため多かれ少なかれ壁を感じていて、異文化からの刺激を求めています」と董成瑜は分析する。

「台湾で最も尊いのは創作の自由があることです」と董成瑜は言う。韓流が世界を席巻していることから分かる通り、国内の市場規模や言語の使用人口などは、産業発展を阻害するものではない。自由に声をあげられる台湾の環境は、創作者にとって大きな力となる。機会を利用して積極的に海外と交流し、創作の質を高めていけば、「台流」はこれからも広がっていくことだろう。