グローバルな言語で語る
このように素材には事欠かないが、「どのような要素があれば良いドラマができるのか」と文化内容策進会副院長の盧俊偉は問いかける。これは非常に難しい問いであり、産業の趨勢分析を行なう文化内容策進会でもこれを研究しており、業界でもさまざまな見方がある。
映像作品を芸術創作ととらえるなら、作品は監督個人の意思や理念を表現すればよく、視聴率や興行成績は問題とならない。しかし、これを産業ととらえるなら、視聴者の好みや視聴の習慣、市場のニーズやマーケティングを考慮しないわけにはいかない。「私たちはしばしば映像『作品』と言いますが、実際には『製品』と呼ぶべきなのです」と盧俊偉は語り、思考の大きな転換が必要だと言う。
だが、映像作品の商業化と言っても、大衆におもねるのではなく、芸術性とおもしろさを兼ね備え、しかもグローバルな手法で表現する必要がある。「ヘンリー‧ジェイムズやマーガレット‧アトウッド、イアン‧マキューアンなど、ノーベル賞レベルの名作家の作品も幾度も映画化され、そのたびに好評を博しています」と外国の小説を愛読する董成瑜は言う。台湾のローカル文化はコンテンツとしてプラスになる。「例えば台湾の廟の文化などにはグローバルな市場があります。ただ、ドキュメンタリーのように直接客観的に表現するのではなく、そこにも転換が必要です」と盧俊偉は言う。
鏡文学では、著作権の二次使用開発という角度から、物語や脚本に一定の選考基準を設けている。「良い物語には魅力的な人物が必要であり、衝突も起きなければなりません。ストーリーは文学的な独り言のように立ち止まってはならず、前へ進む必要があります。また、読者に愛されるだけでなく、映像制作者を感動させられなければ、映像化のモチベーションは高まりません」と董成瑜は言う。
よい原作を生み出すために、編集者は翻案の角度からもアドバイスしていくことで、原作者は「一文字も変えてほしくない」というこだわりを捨てられる。ひとつの小説を、6回、7回と修正することも少なくないと董成瑜は言う。
鏡文学は、親会社である「鏡伝媒」のメディアリソースを活かし、率先して強力な提携プランを打ち出した。それにより本来は筆鋒鋭いジャーナリストが美しい文章を書く作家になったり、あるいはメディア業界で蓄積した人脈を通して紹介やマッチングを進め、作者が執筆を始める前からインタビューを手配することもある。「家の中で頭だけで考え、外国の作品を参考にしたり、ステレオタイプのイメージを抱くより、実際にフィールドワークを行なった方が、リアルで地に足の着いた作品が書けるでしょう」と董成瑜は語る。