シンプルだがシンプルではない
「台湾は、自転車人口が最も多い国ではありませんが、世界十大ブランドのハイエンド自転車には必ず台湾の部品が使われています。どうしてこのようなことが実現したのでしょう」と、台中サイエンスパークにある自転車文化探索館のディレクター汪家灝は、私たちの好奇心を刺激する。
自転車文化探索館は、ジャイアント・マニュファクチャリング(GIANT、巨大機械工業)の創業者である劉金標が、リタイアする前に創設したものだ。1階の展示ホールには世界の自転車の歴史が展示されている。200年余り前、世界で初めてヨーロッパに自転車が出現し、それから次第にハンドルやペダル、ブレーキ、チェーン、フレームなどの構造が発展した。2輪でバランスを取りながら走る交通手段は、こうして人類の移動の方法を変えていったのである。
1970年代、世界をエネルギー危機が遅い、アメリカでは自転車社会運動が巻き起こった。台湾のメーカーはここにビジネスチャンスを見出して産業を発展させていき、今では世界に知られるジャイアント・グループとメリダ・インダストリー(MELIDA、美利達)が相次いで創設された。これに伴って多数の部品メーカーが誕生し、産業クラスターを形成していった。現在、台湾には900社あまりの自転車関連メーカーがあり、台中、彰化、台南一帯に集中している。
簡単な機械原理で動く自転車は、絶えず人々の想像を超えて進歩してきた。展示を紹介しながら、汪家灝は革新的な自転車を紹介してくれる。ジャイアントのBMX(バイシクル・モトクロス)は、かつてアメリカと台湾の青少年の憧れだった。特殊な圧縮フレームで軽量性と剛性、空力性を向上させ、ツール・ド・フランスで活躍するTCR(トータル・コンパクト・ロード)は他社が競って模倣している。材料面ではアルミ合金からカーボンファイバーへと次々と歴史が塗り替えられてきた。また台湾のシェアサイクルYouBikeは世界的に知られる成功事例である。
自転車の構造はシンプルだが用いられる技術はシンプルではない。台湾はかつて最大の自転車輸出国で、当時は1台約50米ドルだったが、現在は813米ドルまで上がっている。量から質への転換によって台湾は世界最大のハイスペックモデルの製造基地となっているのである。
ジャイアント・グループがいかに先端材料と技術を結び付け、アルミ合金フレームを進化させたかを説明する汪家灝。