文学の中の台湾
『亡霊の地』は台湾の夏から始まるが、陳思宏は「台湾の田舎の暑くてたまらない夏については、悪口は言い尽くせません」と言う。彼は、皮肉や冗談、誇張した修飾や悲哀の言葉を用いて、焼け死にそうな中元節の暑さを語り、田舎町の時代遅れの手柄信仰を描く。ストリッパー、中元節、ゲイビデオ、城脚媽宮の露天映画、道士の呪いなど、マジカルな世界が展開する。誇張した表現が積み重なり、物語はいっぱいになってあふれ出してくる。台湾人から見れば、どれも馴染みのあるものだが、外国人なら好奇心を抱き、一度「台湾」を見てみたいと思うことだろう。
『緑島』も、島に特有の湿気と暑さが行間から滲み出している。
楊小娜によると、彼女が暮らすハワイも蒸し暑いが、それでも初めて台湾を訪れた時に感じた暑さは忘れられないと言い、これは作品の執筆にあたっても肉体と感情を結び付けたという。この蒸し暑さと監獄の中の抑圧された空気が、読者を物語に引き込んでいく。
彼女は台湾のイメージを語ってくれた。台中は母親の故郷で、台湾に来る前、大都市で暮らしたことのなかった彼女は非常に新鮮に感じ、自転車で街を走り回った。「都会や地方の多層な歴史に驚きました。たくさんの時代が同時に存在しているのです。これはカリフォルニアでは経験しなかったことです」と言う。
『緑島』を書き終えるまでに14年がかかった。その間に楊小娜は中国語を学び、学術文献に当たり、昔の映画を見て、事件の遺族の話も聞いた。また、古い写真の中から、そこには写っていないディテールをとらえた。こうして研究を重ねたことから、細部までその時代の台湾の風景が描き込まれている。
楊小娜は二二八事件を経験した人々に敬意を表してこの作品を書いた。この歴史が世界に記憶され尊重されることを願っている。(楊小娜提供)