青春の種をまく
地域の問題解決は自分のためでもある。十数年にわたって町づくりの仕事をしてきたが、老王は結婚し、今では二人の子供の父親だ。人生の新たな段階に入り、将来的には児童に関わる問題に取り組むかもしれないという。「私の仕事は、実は自分の問題を解決するものでもあります。自分の呼吸は自分のニーズであって、このニーズは社会の問題解決にもなるのです」
「これからこの土地に責任を負う若者よ/これから進歩の機会を実現し/どこかに理想の人生の種をまく/僕も君に寄り添って心の支えになろう/時代が変わっても恐れることはない/手を取り合って支え合い/大地を踏みしめて勇気を出し/決意をもって青春の種をまこう」——「種下青春(青春の種をまく)」より
2019年、台青蕉楽団は結成10周年を迎え、アルバム『種下青春』を出して、故郷への思いを表現した。
郭合沅はこれまでの台青蕉の3枚のアルバムの特色を次のように語る。最初の『香蕉他不肥』は、若者が音楽を通して農家のためにバナナをプロモーションするものだった。2枚目の『社区大小事(町のあれこれ)』では、政治の現実や社会の状況といった公共の課題に関心を寄せ、激しい曲が多い。10年目の『種下青春』は穏やかで優しく、カントリーを感じさせる。
故郷に残った彼らの実験はまだ続く。彼らが故郷に青春の種をまくのは、どこかにユートピアを探すのではなく、自分の暮らす地域を良くしていくべきだと考えるからだ。
早朝に約束して写真撮影を行ない、移動して7時間バンドの練習をし、さらにインタビューを続けても彼らは少しも疲れを見せない。90年代生まれの普通の若者と違い、台青蕉のメンバーは楽観的だ。「台青蕉は一人ひとりの存在を大切にしています。どうしてこんなに楽観的なのかと言うと、人は必ず成長し、良くなると信じているからです」と黄堂軒は言う。
明日の不安はないのだろうか。もはや専業のバナナ農家でもある郭合沅は「明日ですか。明日も早起きして畑に出ますよ」と言う。「明日の心配ですか。明日の仕事(揺旗吶減フェスティバルの準備)が終わらないんじゃないかという心配だけです」と王継強は言う。
まさにプラス思考のかたまりである。台青蕉はロックのスピリットとバナナ信仰をもって、故郷をより良い場所にしようとしている。
台青蕉が出したアルバム:『香蕉他不肥』(台青蕉楽団提供)
台青蕉が出したアルバム:『種下青春』(台青蕉楽団提供)
台青蕉はフィールドワークの成果を一冊にまとめ、旗山の職人27人を紹介する『小鎮専門店』を発行した。
『小鎮専門店』でも紹介している乾元漢薬店。こうした老舗を記録し、失われつつある昔からの生活を残したいと考えている。(尊懐文教基金会提供)
旗山の地図には、この町の文化・歴史スポットや老舗などが描き込まれ、台青蕉はミニツアーを催して一味違う旗山を紹介している。(台青蕉楽団提供、イラスト/蔡政諭)
「揺旗吶喊Cishanロックフェスティバル」に合わせて旗山の老舗展も開催した。写真はお年寄りを案内する王継強。
1915年に竣工した旗山駅は、住民たちの運動によって保存されることとなり、修復されて旗山のランドマークとなった。