ベトナムの変化と不変
事業を拡大しながら、ベトナムの台湾実業界での経歴や人脈を積み上げ、台商総会においても会員から役員へと順調に上りつめ、今年初めには会長に就任して、これまで以上に台商総会の活動に身を投じている。
「会長となったのは見返りを求めてではなく、台湾企業のイメージ向上のためです」と謝明輝は言う。ベトナムの発展に大きく貢献したのは台湾(産業)、日本(インフラ建設)、韓国(ビル建設)、シンガポール(土地開発)の4カ国だが、中でも台湾企業は雇用を創出し、所得を引き上げて大きく貢献してきたと言う。
ベトナム台商総会はハノイ、バクニン、ホーチミン、ダナンなど14支部を有するが、謝明輝のビンズオン支部が最も大きく、台湾企業の会員は1000社近く、未登録を含めると2000社を超える。雇用従業員数は70~80万人に上り、世界最大の支部と言える。
ベトナムの台湾企業は5400社だが、その75%が南部に集中、その半数がビンズオンに位置する。業種は多岐にわたるが、製造業では既製服が多く、電子、製靴、家具、自転車などが続く。
ベトナム投資に当たっては、ベトナム計画投資省外国投資庁と台湾の現地駐在機関の台北経済文化代表処、外国貿易協会のホーチミン駐在代表処とともに、ベトナム台商総会も必ず訪れるべき場所である。ベトナム投資で欠かせないのは、言語と法律が分る人材である。こういった面でも台商総会は適切なコンサルタントを提供できると、謝明輝は言う。法律の翻訳出版は、台商総会の重要な業務の一つである。
この20年の間に、ベトナムの投資環境は大きく変化したが、変わらないものもある。
変化したものの中では、基本賃金の高騰が一番に挙げられる。謝明輝によると、20年前に投資した時、毎月の賃金は48万ドンに過ぎなかったが、現在では350万ドン(新台幣約5000元)と、ほぼ7倍になった。
ベトナム政府が誘致したい産業も大きく変化し、「ハイテク、教育、サービス業の進出は歓迎されますが、汚染をもたらす産業は歓迎されません」と謝明輝は言う。ベトナム政府は廃水排出基準を引き上げていて、灌漑用水に使えるレベルとしている。
一方では、20年経っても変わっていないものがある。例えば、交通建設は今も大きく遅れている。南北に細長いベトナムだが、現在に至るまで高速道路が整備されていない。5年前にハノイとホーチミンとで都市交通の建設が始まったが、建設は遅れがちで、開通までまだ2年かかると見られている。
また、ベトナムは昔ながらの人間関係がものをいう社会で、地方では人脈が大切である。台湾企業の経営でも、台商総会の運営でも、人脈は大切なのである。
ベトナム台湾工商聯誼総会は近年、台湾-ベトナムの教育交流に力を注いでいる。現地での台湾人学生のインターンシップや、教育部がベトナムで開催する高等教育フェア、台湾に嫁いだベトナム人の職場体験活動などにも積極的に参画している。