あらゆる方面で友好を
スペイン商務弁事処のFacebookページ「西班牙在地台(Spain In Taiwan)」では、ほぼ毎日エウバ氏が出席したイベントの報告が投稿されている。秘書によれば、彼は何人分もの仕事を一人でこなすほど忙しいが、政治、経済、文化、歴史、芸術、教育など、どんな分野でも両国の友好促進の機会があれば、決して逃すことはない。
その例の一つがスペイン商務弁事処にある。壁に掛けられた多くの絵画のうち、『陽台(バルコニー)』という絵は、彼が台湾のアーティスト、江書逸さんに依頼した作品だ。
2021年に弁事処を改装した際、エウバ氏はスペインを象徴するような絵を廊下に掛けたいと考えた。同僚に探してもらった結果、2020年にスペイン留学から帰ったばかりの江さんに依頼することになったのだ。
陽光の国スペインで実際に暮らし、写実的な絵を描く江さんは、温かみのあるイラスト風の絵にしようと提案した。一つ一つ個性あるバルコニーを画面に並べ、スペインの芸術、歴史、文化、有名人といった要素を配置する。ここを訪れてこの絵を見た人に、宝探しをするようにそれぞれの要素をたどってほしいという狙いだった。人の背の高さほどもあるこの水彩画は今、窓のない廊下の突き当りで陽光が注いだかのように輝いている。
江書逸さんによれば、この絵が掛けられた日、エウバ氏は細部まで注意深く眺め、「ムイ・ビエン(とても良い)」と言った。短い言葉だったが、昔の絵師が大聖堂の絵を完成させた時のような誇りを江さんは感じたと言う。スペインが彼にくれた温かさを描いたのだから。
ほかに恒例のイベント行事にも、エウバ氏の独自の考えが見て取れる。
中華民国国慶日の直後の10月12日がスペイン建国記念日で、商務弁事処でも毎年台北で祝ってきた。だが近年は台中や台南などのほかの町でも開催され、2024年には高雄でも行う予定だ。これらはエウバ氏の赴任後の変化だという。
「台湾には首都以外にも、異なる容貌を持つ町が多くあります」。建国記念の祝賀行事を異なる都市で行うことで、スペインの音楽や芸術、食べ物をそれぞれの町に伝えることができると彼は考える。これは各都市との交流の良い機会であり、より多くの台湾人にスペインを知ってもらい、文化や芸術でも両国の交流を促進できる。
台湾と言えば、国際的に有名になった半導体が思い浮かぶが、エウバ氏は、確かに半導体は台湾を世界の舞台へと導いたが、台湾にはほかにも豊かな文化や芸術、歴史があると考える。例えばオーストロネシア文化や原住民族もそうで、それらは世界に見出されるのを待っているという。
絵の中には、スペイン各地のスタイルのバルコニーや、ベラスケスの名画に登場する女性、ピカソを思わせる男性など、スペインを象徴するものが多く描かれている。(江書逸氏提供)