オープン・ガバメントを求めて
台湾は昨年、フランスで開かれた「オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)」サミットに参加し、さらにドイツやメキシコ、南アフリカなどのコミュニティ代表とともに「国家予算」をテーマに交流している。
台北市政府もg0vの「中央政府総予算」を利用して台北市民に予算計画への参画を呼び掛けている。「これは良好な発展です」と話す高嘉良は、政府と市民の協力関係の確立は、相互の信頼が基礎になると語る。
もう一つの成功例は、vTaiwanデジタル法令調整プラットフォームである。これもg0vのプロジェクトで、公共政策に市民の意見を反映させることを目的とする。
政府がg0v のモデルを活用しているだけではない。g0vのメンバーで今は行政院デジタル担当政務委員を務める唐鳳はg0vのメンバーと経験を政府内に取り入れ、オープンガバメントを目指している。「オープンガバメント担当者」は唐鳳がもたらした新たな制度で、行政院の各省庁に担当者がいる。公務員組合結成の可否やフカヒレ売買の禁止、高校の8限目禁止、国産車衝突試験の公開などについて、民間団体や関連業界を招いて公開で議論を進めている。
唐鳳のオフィスに入ると、壁には付箋紙が大量に貼られていて、一般の官僚のオフィスのイメージとは異なる。彼女はパソコンを使ってオープンガバメントの実例「萌典」を説明する。
「萌典」はg0vのプロジェクトの一つで、多言語版のオンライン辞書である。教育部の国語辞典をオリジナルコンテンツとして、閩南語常用辞典、客家語常用辞典と合わせ、筆順や音声からも検索できる。パソコン版だけでなく、iOSとAndroidのスマホアプリもあり、すぐに世界中で好評を博し、中国語を学ぶ外国人にとって重要なツールとなっている。
オープンソースに詳しく、中国語を学んでいるフランス人学生は「萌典」を知り、これに英語、ドイツ語、フランス語のデータを加えた。これに続いて台湾海峡両岸萌典、iTaigi.tw、アミ語萌典、チベット語萌典なども登場している。
オックスフォード大学も国際交流の場で台湾の「萌典」を知り、台湾のソースコードを用いて「ズールー語」のデータバンクを作った。
萌典プロジェクトは、世界の言語学者や教育学者からも注目されている。オープンソースのコードを使えば応用が利くことから、消滅危機言語の保存や学習の利器として活用されている。
g0vコミュニティは、市民の自主的な参加を通して政府の情報公開と民主主義の深化を促している。写真は、政策を熱心に討論するHackathonの模様。