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グローバル・アウトルック

デジタル化が進む飲食業界

デジタル化が進む飲食業界

文・蘇俐穎  写真・林旻萱 翻訳・山口 雪菜

1月 2021

コロナ禍の影響で、シェフの林明健は将来の経営や展開について考えるようになった。

2020年は忘れられない一年となった。新型コロナウイルスが世界を襲い、人々の日常生活が大きく変わったのである。地域や業種に関わらず、全面的にダメージを受けた。その規模は1918年のスペイン風邪にも匹敵する。

ソーシャルディスタンスが叫ばれ、まず矢面に立たされたのはリアルな観光産業や交通産業、飲食業などである。

新型コロナウイルスの影響で、消費者のデリバリーサービス利用は習慣化し、すでに不可逆的な影響と変化をもたらしている。(陳美玲提供)

落ち込むリアルな消費

2019年末に海外から新たな感染症の情報が入ってきたが、台湾がその威力を実感したのは春節以降のことだった。特に国内で感染者が増え続けた3~4月は一年で最も深刻な時期だった。

オンラインメディア「就愛開餐庁」と、飲食店向けソフトウェアサービスを行なうiCHEF社が、飲食店1400軒を調べたところ、4月初旬の清明節の頃が、売上が最も落ち込んだ時期だった。政府がソーシャルディスタンスの確保を呼びかけると飲食店の売り上げは23%落ち込んだのである。6月に感染拡大が収まると、夏休みに合わせて需要は伸び始め、景気も回復し始めた。

それでも世界的な感染拡大は続いており、消費はわずかながら衰退を続けている。

香港から来たシェフの林明健は、台北でChou ChouとLongtail、Wildwoodという3軒の異なるタイプの高級レストランを経営している。いずれもミシュランガイドで紹介され、海外からの観光客が数多く来店していたが、やはり新型コロナの影響を受けた。「昨年の良い時期と今年の悪い時期を比べると売上は半分になりました」と言う。

レストランにPOSシステムを提供するiCHEFは、多くの業種が衰退する中で業績を伸ばしている。

多角化経営でテイクアウト市場に

最も苦しかったのは3~4月だ。「困ったのは、いつ収束するかわからないことでした」と言うが、それでもあきらめることはなかった。「店のチームはむしろ積極的でした」と言う。

コロナ禍で飲食店経営者は経営方針を見直すこととなった。以前は、収益をすべて店舗の売上に頼っていたが、一つだけに絞るのはリスクが高いことに気づいたのである。

そこで経営多角化は、テイクアウトからスタートした。消費者はレストランに行かなくても、食事はする。そこで少なからぬ高級レストランが高価な弁当を売り始めた。中でも高価なのは「山海楼」の「山海珍宝」弁当であろう。デザイナーに袋のデザインを依頼するなどして、伝統の高級料理の弁当を売り出し、それまで和食が中心だった高級弁当市場に新たな商品が加わった。

iCHEF創設者の呉佳駿は、飲食店がデジタル・トランスフォーメーションを進めるのに必要なのは、変えたいという思いだけだという。

勝敗のカギはデジタル化

コロナ禍で、逆にソフトウェア産業は伸びている。9月、スタートアップ企業のiCHEF(資厨)は、研究開発部門拡張のために1.5億元の資金募集を発表した。

iCHEFは合理的な価格で使いやすいPOSアプリを提供している。注文から売上分析、原価管理まででき、デリバリー‧プラットフォームやフェイスブックともリンクしているため、人件費削減や顧客開拓にもつながる。彼らは、独自にシステムを開発できる大企業ではなく、中小の飲食店をターゲットとしており、台湾では最大のシェアを誇る。顧客は香港やシンガポール、マレーシアにもいて、コロナ禍で年末には顧客数が9000を超える見込みだという。

個人経営の飲食店を主な顧客とするiCHEFの呉佳駿によると、新型コロナウイルスが発生する前からデジタル化を始めた店舗も、多かれ少なかれ影響を受けたが、その後ネットでの注文が急速に伸びたことで売上低下を抑えることができた。これに対して感染が拡大してからデジタル化の準備を始めた店舗では「デリバリー‧サービスに高い手数料を支払うこととなり、しかもその使い方に適応できず、デリバリー‧プラットフォームでの評価も最も低いのです」と言う。

「これまではリアルな経済しか存在しませんでしたが、コロナ禍は誰にも平等に襲いかかっています。今は新しいデジタルサービス形態があるのですから、それを利用した店こそ成長していけるのです」と言う。

コロナ禍で飲食業界は入れ替わりが進み、生まれ変わろうとしている。林明健は家賃の下落を見て、4店目の開店を目指している。呉佳駿が言う通り、デジタル‧トランスフォーメーションは道具ではなく考え方の転換なのかも知れない。

コロナ禍で、職場の団結力は高まった。