自給自足でチャンスをつかむ
中米のホンジュラスには、日常的に食べるアボカドの栽培に適した環境があるのだが、極度に輸入に頼り、一時は需要量の83.4%を輸入していた。そこで同国は2018年から台湾の国際合作発展基金会(ICDF)駐ホンジュラス技術団と協力して国家アボカド計画をスタートさせた。まずアボカドの種苗能力を向上させ、安定的な生産に必要な量の健康な種苗を育てることとした。
ホンジュラス国内でのアボカドの需要が多いため、ICDFと農業技術団は、地元の消費者が好む品種をメインにするよう提案し、現地で最も広く受け入れられているハス種を栽培することにし、年間25万株の種苗を生産することが目標となった。さらに「拡大アボカド栽培計画」が実施された。アメリカの非営利団体である「貧しい人々のための食糧(Food For The Poor)」のホンジュラスでのパートナー、CEPUDOから無償で関連設備と資材が提供されることになり、順調に最初の一歩が踏み出せた。これによりホンジュラスの180世帯に540近い就労の機会をもたらすことができると見込まれた。
「全額補助されるということで、もともと農業を営んでいた高齢の農家がアボカド栽培に切り替え、それを次の世代が支えることができました」と駐ホンジュラス技術団長の林世勲は言う。「若い農家の中には、コーヒー畑を上の世代から引き継いだ後、自国の政府が台湾と協力してアボカド栽培を推進していることを知り、台湾の農業技術団から苗を買っていく人もいます」と言う。
経済的条件を考慮して、技術団はハイテク設備を普及させるのではなく、アボカドの「剪定技術」や「ミツバチを使った受粉技術」などを指導し、アボカドの生産量を増やしている。
新型コロナウイルスの感染が拡大した時期には全国的にロックダウンが実施されたため、指導中だった僻遠地域の農家は外出ができなくなった。彼らはトウモロコシや野菜を食べて何とかやり過ごせたが、アボカドの世話をすることはできず、そのまま枯れていくのを見ているしかなかった。そうした中、技術団は補助金を申請して栽培に必要な物資を僻遠地域に送り、さらに高温の中、感染予防のための防護服を着て一本ずつアボカドの木の手入れをし、少なからぬ果樹を守ることができたのである。これに対して農家の人々は「『苦しい時こそ真の友を知る』ことを台湾が教えてくれた」と感謝してくれたという。
新しい作物に挑戦するホンジュラスの若い農家に、技術団がアボカド栽培を指導する様子。