気候変動——科学技術で農業を救う
「気候の極端現象は、すでに世界的な現象となっています」と話す財団法人国際合作発展基金会技術合作処の顔銘宏‧処長は、農業の将来の話になると表情を曇らせる。「こうした状況に、思いがけずも新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が加わり、世界経済は大打撃を受けました。農業もインフラ建設も大変な緊張状態にあります」と言う。農業は天候が頼りの産業だ。近年は異常気象が激増しているが、顔銘宏はこれが間もなく「日常的」になると見ている。
その話によると、台湾で最も頻繁に発生する農業危機は「水」と関わっている。現在、全世界の総降水量は例年と変わらないが、降水の分布が極端化しており、これが農業の発展に重大な影響をおよぼしている。
大部分の農家は過去の経験に基づいて状況を判断するが、現在の極端現象に対しては打つ手がない。こうした状況に対し、財団法人国際合作発展基金会と国家災害防救科技センターの技術部門が手を組んだ。科学技術の力で、変化する気候や突然のパンデミックに対抗し、対応のスピードと精確さを高めるのが目的だ。さらに、開発されたテクノロジーの応用範囲を「災害前」の予防と「災害後」の復興や再建にも広げていく。
顔銘宏は、台湾で年間生産高60億元の商品作物への応用を例に挙げる。「台東の釈迦頭(バンレイシ)は、毎年10月前が重要な生長期ですが、それはちょうど台風の季節と重なります」バンレイシは台風がもたらす強風と豪雨よりも、台風が中央山脈を越えた後に起きるフェーン現象の影響を受けやすい。フェーン現象による異常な高温と乾燥が深刻なダメージをもたらす。
「そこでバンレイシに被害をもたらす気温と乾燥の限界値を研究し、IoT(モノのインターネット)デバイスを通してそのデータと畑に設けた自動観測設備をつなぎ、予測データによってスプリンクラーを起動するようにしました」と言う。天候の影響を直接受ける農業においては、タイミングが最も重要なのである。
IoTの応用範囲は広がりつつある。この設備の原価は5万元ほどで、農家にとってもコストパフォーマンスは非常に高く、こうした研究は農家に新たな希望をもたらしている。