産学協力でネットゼロへ
民間企業もサステナビリティを目指す多くの団体を設立し、政策に関する提言を行なうなどして、産業と政府の懸け橋となっている。
ビル·ゲイツ氏は著書『地球の未来のため僕が決断したこと』の中で、「ネットゼロの企業や産業を確立する力のある国は、今後数十年の間、世界経済をリードするだろう」と述べている。
多くの台湾企業は大学と協力し、二酸化炭素排出削減技術の開発に取り組んでいる。例えば、成功大学は国内で初めて二酸化炭素排出量をマイナスにする「カーボンネガティブ·パイロット工場」を構築した。カーボンネガティブ技術は排気ガスの中の二酸化炭素をメタンとエタン、プロパンへと転換するものだ。そのうちメタンは台湾の天然ガス燃料の自主生産技術を実現する。エタンとプロパンは、水素を分離、炭素固定を経て、二酸化炭素を石油化学産業の川上の原料とする。成功大学化学工学科の陳志勇教授によると、二酸化炭素を捕集して封じ込めるカーボンキャプチャー(CCS)や二酸化炭素の純化、吸収剤の再生、水素化触媒など、一連のコアテクノロジーはすでに15項目の国際認証を取得しており、台湾のカーボンネガティブ技術が世界の水準に達していることが証明された。将来的に、この一連の技術は各産業に導入され、中油(CPC)、中鋼(CSC)、台湾電力、台湾プラスチックといった大企業でも用いられることとなる。
SDGsの「クリーンエネルギー」部門において、国営企業の台湾糖業は太陽光発電設備の水上·陸上建設という項目でサステナブルアクション賞の金賞を受賞した。台湾糖業の放置されていた土地を太陽光発電エリアや光電遊水池などに転換するという措置で、すべて完成すれば7億kWhの発電ができ、カーボンニュートラルに大きく貢献することとなる。
SDGsのもう一つの目標である「産業と技術革新の基礎をつくる」部門では鴻海精密(ホンハイ)が金賞に輝いた。同社は近年、電気自動車(EV)の開発に力を注いでおり、2020年にMIH電気自動車オープンプラットフォームを開設した。分野を越えた協力を促進して開発期間を短縮し、イノベーションの力を高めようとするもので、すでに内外のメーカー2200社が加入している。わずか2年のうちに、鴻海と裕隆汽車傘下の鴻華先進科技(Foxtron)は、初めてのSUVの電気自動車Model Cを開発し、近々予約を受け付けるという。台湾で初めての電気自動車ブランドである。
台湾には情報通信産業と半導体産業の実力があり、台湾積体電路製造(TSMC)や日月光半導体(ASE)、友達光電(AUO)、同欣電子、GARMINなど、多くの企業がそれぞれの領域で世界一の座についている。これらをつなげば、台湾の電気自動車革命を推進できるだろう。
蔡英文総統は、昨年4月22日のアースデイに、2050年にネットゼロを実現するという目標を宣言した。行政院も、今年3月に台湾の温室効果ガス排出ゼロへのロードマップと、テクノロジーの開発と気候法の二大政策を基礎とすること、そしてエネルギー、産業、生活、社会の四大転換戦略を打ち出した。さらに2030年までに9000億元の予算を投じてネットゼロへの転換を進めるとしている。また、台湾永続能源基金会は、大学や企業に対して、国連が2030年までの目標としているSDGsの実践を呼びかけ、台湾の持続可能な発展に向けて邁進している。
成功大学は国内初の「カーボンネガティブ工場」を構築した。(国立成功大学ニュースセンター提供)
持続可能な発展の思考を取り入れる企業が増えている。友達光電は再生循環材料を導入し、炭素管理とエネルギー貯蔵のプラットフォームを構築した。
台湾のMIH電気自動車オープンプラットフォームには、さまざまな業種の企業が加入し、イノベーションを加速させている。
持続可能な発展は、政府、企業、学界、社会がともに努力して達成しなければならない。(APFES提供)