より深く長い影響
唐奨の受賞者には5000万台湾ドルの賞金が贈られるが、これは世界の学術賞の中でも最高額である。そのうち4000万元は受賞者個人に贈られ、1000万元は関連研究に充てることが求められる。このような仕組みにより、唐奨は各分野に深い影響を及ぼしている。
「第1~4回の受賞者は27名、計29のプロジェクトが実施中または完了しています」と陳振川氏は振り返る。唐奨のCEOとして、彼は常に世界各地のプロジェクトの実施状況や成果を視察している。「第1回の持続可能な開発賞を受賞したブルントラント元首相は、研究費の約半分の500万元をケニアのMilgis Trust保護団体に寄付し、ゾウの保護に充てています」と言う。そこで陳振川氏は自らケニアを訪れ、ゾウと現地の生態を視察した。その話によると、かつて現地住民は象牙で利益を得るためにゾウを殺していたが、今はプロジェクトによって監督が行き渡り、エコツーリズムへと転換したことで、サステナビリティに対する住民の理解も深まっている。
第1回の「法の支配賞」を受賞した南アフリカのアルビ‧サックス氏は、唐奨の賞金で「アルビ‧サックス立憲主義と法の支配信託(Trust for Constitutionalism and the Rule of Law)」を設立し、かつての南アフリカの民主化を詳細に記録している。「この資料は世界中に提供され、記憶されるべきものです。非常に貴重で特別なプロセスです」と陳振川氏は言う。南アフリカ社会には今も多くの問題があり、歴史の傷跡は時間をかけて癒していく必要があるが、南アフリカの国民と世界の人々は、この歴史を記憶しておかなければならない。
唐奨教育基金会は、すべての受賞者を台湾での授賞式に招き、それと同時にマスターズ‧フォーラムを開催して学界と交流し、また高校や大学での講演にも招いて、若者たちに大家の姿に触れる機会をもたらしている。
歴代の受賞者から基金会への返礼もあり、今回の唐奨十周年展で見ることができる。例えば、第4回の持続可能な開発賞を受賞したジェーン‧グドール氏は、タンザニアのゴンベ国立公園の木の枝を寄贈した。これはグドール氏が野生のチンパンジー(デイビッド‧グレイビアド)がシロアリを釣り上げるために道具を使っているのを初めて見た時の、その木の枝である。グドール氏はこれにより、チンパンジーが道具を使う能力を持つことを発表した。霊長類研究における新たな発見であり、人類と動物との関係を定義しなおすものとして科学界に衝撃をもたらした。
若者が人生の岐路において、優れた学者や大家から教えを受け、あるいは何らかの歴史的現場において重要な役割を果たした器物を目にすることは、貴重な経験となる。唐奨は、こうした人物や器物を台湾へもたらし、台湾の学生たちはそれを通して世界を知ることができ、理想を追求し、世界平和のために力を尽くすことができる。
第1回持続可能な開発賞を受賞したグロ‧ハーレム‧ブルントラント氏は、唐奨の賞金を、ゾウの保護のためにケニアのMilgis Trust保護団体に寄付した。