以前の感覚を取り戻す
周天成は、多くの人に感謝していると語る。国家訓練センターやスポーツ科学センターと話し合い、体力や呼吸の訓練から栄養面まで、すべてがつながって功を奏したのである。
特にニューラルネットワークによって、スピードとパワーがしだいに回復したと言う。日本の佐藤先生の理念を学び、訓練を受けたことで反射神経が格段に良くなり、脳から手や寛骨、足への伝達速度が速くなり、さらに病気前の感覚が戻ってきたことが大きかったと言う。
2014年、周天成はスーパーシリーズのフランス・オープンに出場し、台湾の男子シングルス選手として初めてBWFスーパーシリーズで優勝した。2019年には最上位グレードのSuper1000に認定されているインドネシア・オープンで優勝し、世界ランキング2位まで上昇し、ファンからは「台湾バドミントンの兄貴」「バドミントンの天神」と呼ばれるようになった。
彼は勝てるようになった要因の一つを教えてくれた。それは物理療法士の高敏珊が取り入れたPNF(固有受容性感覚器神経筋促進)トレーニングだ。これによって関節の動きや筋膜の伸び、反射神経が良くなり、「以前はできなかった動きがたくさんできるようになりました。たとえれば、以前は2Dだったのが3Dになったような感じで、試合でも体力を温存できます」と言う。
2019年、彼はコーチを招請するのをやめ、自分で考えることにした。「神が私のコーチです」と言う。名プレーヤーであるマレーシアの李宗偉や中国の林丹のプレーを参考に、シャトルの引き付け方や身体の向きの変え方などを真似し、それらを自分のものとしていった。
シャトルに十分に力が入らないとプレーは受け身になり、すぐに点を失ってしまう。ではどうすれば力強い球が打てるのか。「より遠くへ、重い球を打ち、相手からの攻撃の機会を減らすことが重要です」と言うが、肉体の力を、どうすれば球に込められるのだろう。簡単なことのように思えるが、実際には非常に難しい。
「すぐに理解できる人もいますが、私はじっくり考えるタイプで、夜寝ている時も考えています。急にベッドから起き上がってラケットを振ってみることもあります」と言う。