人は昔から茶の香りと味を追求し、今もそれは続いている。茶の産地である台湾では、自然農法による茶葉の生産へと回帰しつつある。環境にやさしい茶畑で採れた茶葉を発酵、焙煎して淹れたお茶は、大地の滋味に富んでいる。大地にやさしい農業に対する大自然からのお返しである。
今月号の「光華」は皆様を茶の産地へご案内する。2014〜18年に農業委員会が「ライトアップ台湾茶」に選出した茶荘や有機農法の茶畑を訪ね、おいしいお茶の背後にある農家の努力をご覧いただきたい。また、茶芸と花芸の対話や、さまざまな産地や品種の茶葉をブレンドし、あるいは花びらや果物、ハーブなどを加えた花茶やフレーバーティにも目を向ける。産地、製茶、茶芸からさまざまな飲み方、テイスティングまでご紹介する。
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伝統工芸を現代にふさわしいものにするには、どのようなイノベーションが必要なのだろう。デザイナーの手によって伝統的な羽毛のホコリ取りが小さくなり、オフィスのデスクに飾れる癒しの小物となった。多くの人に金管楽器に触れてもらおうと、デザイナーはミニトランペットやラッパの形のスマホ用スピーカーを開発した。台湾伝統の人形劇「布袋戯」においても、国宝級の人形遣いである陳錫煌が、二枚目と娘、道化の三役だけの、台詞のない舞台にアレンジし、台湾語のわからない外国人をも魅了している。
また、半世紀にわたってデザインと教育の分野で活躍してきた柯鴻図は、自らを「経験の浅い老画家」と称し、幼い頃の夢を実現するために繊細な筆致の工筆画で、生き物の最も美しい瞬間を描いている。創意と執着と情熱、それこそが彼らに共通の精神であり、台湾を一層豊かにしている。
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台湾で最も有名なロケット研究者の呉宗信は、かつてTED×Taipeiの講演で、親しみのある台湾語に英語を交えつつロケットの推力や宇宙航空経済の将来などについて語った。台湾の有名バンド五月天(メイデイ)も彼の物語をもとに「頑固」という歌を作ったほどである。その素晴らしいロケットの夢をぜひお読みいただきたい。
このほかに、国際協力プロジェクトとして中南米諸国の火傷患者治療のための専門人材育成に努める陽光基金会の物語、そして台湾に12人しかいないアーボリスト(樹護士)もご紹介する。彼らはどのように樹冠まで登り、専門的な判断によって複雑な枝を剪定し、また幹の健康を守っているか、ぜひお読みいただきたい。これらの取材記事と美しい写真を、この土地で懸命に努力するすべての人に捧げる。