1996年8月の『光華』に「アトランタに台湾原住民族の歌声」という記事が掲載された。当時開催されたアトランタ‧オリンピックのプロモーションビデオの中に、台湾のアミ族の歌声が使われていて、このことから一連の著作権侵害の問題が発生したのである。原住民族に代々伝わる歌と同様に、台湾のインディーズ音楽の特色を打ち出した音楽コンクールや音楽祭、レコードショップやライブハウスも、台湾のオリジナル音楽にとって貴重な資産であり、私たちはこれらを大切に守っていく必要がある。
今月号でご紹介する蒂摩爾古薪舞集の創立者であり美術総監督の路之‧瑪迪霖(Ljuzem Madiljin)が「パイワン文化の美しさは、一般にイメージする伝統の祭りや歌舞などではなく、暮らしの細部や、人と人とのふれあいにあります」と言うとおりだ。オリジナリティとは、この土地における人と人とのつながりや、人と自然万物との深い関わりや理解から生まれる。台湾のインディーズ音楽を理解したいと思われる方は、ぜひ今月のカバーストーリーをお読みいただきたい。これまでとは異なる角度から音楽を体得することができるだろう。
「音楽」は人と人との感情の距離を縮めてくれる。また「言語」は異なるエスニックの間で最も直接的なコミュニケーションの手段となる。先頃『光華』翻訳フォーラムが国立台湾師範大学で開催され、中山女子高校、明倫高校、建国高校の生徒たちが集まって盛況となった。フォーラムでは翻訳の実務やスキル、クロスカルチャーなどが討論された。スピーカーの3人——アメリカ人のロバート‧フォックス、日本人の山口雪菜とインドネシア人の陳徳銘の、経験に基づいた話は会場の生徒たちから大きな反響を得た。2年連続で開かれた『光華』翻訳フォーラムは、2021年はどのような形で開かれ、ゲストはどのようなエピソードを披露してくれるのか、ご期待いただきたい。
今月号の「台湾をめぐる」シリーズでは、台湾鉄道の南廻線の物語と、オランダ‧スペイン統治、明の鄭氏、清国、日本統治から戦後までの基隆の歴史現場をご案内する。また、台湾初の女性樹木医である詹鳳春と、国の紙幣彫刻師である孫文雄の素晴らしい物語もお読みいただきたい。ドキュメンタリー監督の蕭菊貞はインタビューの中で「40歳以上の台湾人なら、進学や兵役、仕事で故郷を離れる際の記憶の中に、たいてい列車があるはずです」と語った。同じように『光華』は、学業や仕事で海外へ出ていく多くの人、あるいは海外華僑の二世や三世にとって「台湾」と気持ちや思い出がつながる最良の媒介なのである。