ここ数年、台湾では素晴らしい公共建築が増えている。台中后里で保護犬‧猫を収容する「動物の家」、屏東県立図書館、南寮漁港の魚鱗天梯など、枚挙にいとまがない。今月の『光華』のカバーストーリーでは、ランドスケープにとけ込んだ、工夫の凝らされた公共建築の背後--文化や人への思いにあふれた建築の物語をお読みいただきたい。
また「市民科学」に関する記事では「eBird Taiwan」や「路殺社」についてご紹介する。一般市民と科学者が協力して自然保護や環境保全に取り組む市民科学(シチズン‧サイエンス)はどのように始まったのか、どこまで進んでいるのだろう。特有生物研究保育センター研究員の林瑞興が本誌に語った通り、市民科学の成否は社会の発展レベルと正比例を成す。経済が発展し、社会が民主的で開放的、そして自然保護に対する人々の意識が高いことなど、社会の進歩と成熟の象徴とも言えるのである。
客家委員会と台湾千里歩道協会などの民間団体が協力し、かつて茶葉や樟脳を運んだ山道や農道、産業道路の発見が進み、桃園、新竹、苗栗から台中にかけての全長380キロの「樟之細道」が復元された。『光華』取材班は、これらの古道を実際に歩き、周辺の自然や美食、文化的景観などを体験し、老官路の古今をお伝えする。
このほかに、日本統治時代に異彩を放った3人の画家——郭雪湖、林玉山、陳進の物語と作品もご覧いただきたい。また、クラシック音楽と台湾文化の融合に取り組むピアニストのルイビン‧チェン(陳瑞斌)と聯合民族管弦楽団団長‧黎俊平へのインタビューにも注目していただきたい。さらに、台湾ならではの物産を用いて香水やお香を生産するイノベーションの物語もある。そして、社会的弱者のセーフティネットを構築し、一人も漏らすまいと努力する「浪人食堂」「友洗社創」「居家美」などの慈善団体もご紹介する。また、読者から寄せられた写真による「台湾の森林の美」特集など、歴史の継承、建築、古道、市民科学、人や文化への関心、それに台湾独自の研究開発やイノベーションなど、一つ一つが実に奥深い台湾の物語を伝えてくれる。