
台北科技大学では、プログラムの学生たちのために中華文化を体験するさまざまなカリキュラムを用意した。
外交部は、昨年から今年にかけて第1回「連結新南向菁英培育専班(新南向政策エリート育成プログラム)」を実施した。台北医学大学、国立台北科技大学、国立金門大学と協力して行なわれた一学期にわたるカリキュラムは、参加した学生たちに多くの収穫をもたらした。専門課程のほかに、学外での活動や美食を味わう活動なども行ない、誰もが「機会があったらまた台湾に留学したい」と語った。
「茶杯を持つ3本の指は、天と地と人を意味し、心と茶の合一を表します。茶杯は丸く、茶托が四角いのには縁を結ぶという意味があります」と茶師の許育仁さんが話す。彼が学生に茶を出す時におじぎをすると、学生たちも感謝を込めて礼をする。楽師の黄錬金さんが現場で伝統楽器を演奏し、その雅な楽の音の中、南投県で採れた白茶のすがすがしい香りと甘みを味わえば、心も安らかになる。
これは、国立台北科技大学が外交部主催の第1回「新南向政策エリート育成プログラム」の学生のために催した茶道の授業の様子だ。中華文化の美を知ってもらうために、台北科技大学台湾華語教育資源センターは、篆刻や鶯歌の陶器の絵付け、九份の天灯、八段錦気功体操などさまざまな課外活動を用意した。
学生たちが最も収穫が大きかったと語るのは、華語と半導体のカリキュラムで、参加した学生たちは機会があったら今度は台湾の修士課程に留学したいと語った。

金門大学ではチャイナドレスを着て古い建築物の前で記念写真を撮った。(金門大学提供)
新南向政策とつながる人材育成
これは外交部が初めて新南向政策(東南アジアや南アジア、オーストラレーシアの18ヶ国との協力と交流を強化する政策)の対象国の若者たちに向けて実施した人材育成プロジェクトである。協力した3つの大学が厳格な審査を行ない、6ヶ国から250人を超える応募のあった学生の中から50人を選出し、5ヶ月にわたるカリキュラムに参加してもらうというものだ。
1月7日に行なわれた修了式で、外交部の田中光・政務次官が「時のたつのは速いもので、始業式がまるで昨日のことのように思える」と語ると、学生たちもうなづいていた。
田中光政務次官は、人材育成は新南向政策における重要な一環だと語った。これらの国の若者たちが教科書や報道などだけを通して得た台湾に関する知識は絶対的に不十分なので、外交部は人材育成カリキュラムを設けて学生たちを台湾に招くことにしたのである。プログラムでは半導体やバイオテクノロジー、地域研究などの課程のほかに、華語や台湾文化に関する授業も提供し、台湾のソフトパワーを示すものとなった。学生たちを受け入れた大学は、それぞれの強みを活かして特色あるカリキュラムを提供した。
台北医学大学は、学生たちが選択履修できるよう60余りのカリキュラムを用意した。学生の大部分は大学生だが、ベトナムやインドネシアからは現役の医師や看護師、大学講師なども参加し、彼らは応用感染症学や国際公衆衛生、精神神経科学、基礎プログラム言語なども学んだ。
ベトナムのホーチミン市立腫瘍病院で医師を務めるChau Hoang Minh Vuさんは、台湾の医学生は中医薬も学べ、中国と西洋の医学を合わせた教育が受けられるが、これはベトナムではかなわないことだと語った。山登りの好きなVuさんは、授業の合間に四獣山や陽明山などにも登り、「台北医学大学で学んだAIやデータサイエンスなどは非常に役に立ちます」と言う。
台北科技大学は専門的な半導体カリキュラムを提供した。マレーシアのトゥンク・アブドゥル・ラーマン大学から来た華僑学生の林道暄さんは、化学工学を専攻している。マレーシアのペナンにも半導体クラスターがあるが、台北科技大学での半導体のカリキュラムは大きく目を開かせてくれ、非常に役に立ったと語る。
同じ大学の電気学科に学ぶ張家競さんは、マレーシアで受ける半導体の授業に比べても、台湾でのカリキュラムは深くて詳細で、大きな収穫を得ることができたと語った。

新南向政策の対象国から来た学生たちは、台湾でたくさんのものを学び、素晴らしい「台湾経験」を故郷へ持ち帰った。
豊富で多様な文化カリキュラム
国立金門大学は、プロジェクトの学生にすべてのカリキュラムを開放し、一人6単位、3つの課程を選択できるようにした。同大学の顔郁芳・国際長によると、金門は特殊な地理的位置と歴史的背景を持つことから、プロジェクトの学生たちには華語と専門カリキュラムのほか、金門特有の閩南文化に触れてもらったと語る。学生たちは将来的に、新南向政策対象国における台湾の良き友人となることが期待されている。
金門大学は、八二三戦史館や古寧頭戦役前進指揮所のあった湖南高地などに学生たちを案内してかつての戦地の情景に触れてもらった。さらにBB弾銃を使ったサバイバルゲームを体験するなどして、台湾の地理と国際情勢を実際に感じ、体験してもらった。
金門大学華語文センターでは、さらに冬至に湯圓(白玉団子)を食べ、灯篭に絵を描き、将棋を習うといった活動も組み込み、学生一人ひとりに華語の名前もつけた。「金門の人々は人情味があり、私たちが華語を話す練習をするのに忍耐強く付き合ってくれました。金門名産の包丁店を訪れた時は、経営者と20分も華語で話すことができました」と話すのは、インドネシアから来た唐嫣さん、潘娜さん、周新穎さんだ。彼らが話す表情は自信に満ちている。
他の学校が比較的気軽な屋外活動を催したのに対し、台北医学大学は学生たちを率いて福隆海岸を訪れ、ビーチクリーン活動を行なった。さらに「新事社会サービスセンター」の手配を通して一緒に東南アジア出身の漁業労働者を訪ね、母語で対話をした。
この漁業労働者との対話について、台北医学大学の蔡佩珊・国際長がプログラムの学生たちから聞いたところでは、漁船で働く移住労働者たちは、特に台湾の冬の寒さに慣れなくて辛いという話で、魔法瓶が欲しいということだった。そこで国際処は冬物の衣類や布団、魔法瓶などの寄付を募り、学生たちに現地と連絡を取らせることで、大学に多様な文化的視点と社会への関心をもたらした。

インドから来た学生たちと、インドの駐台使節(左から2人目)との記念写真。
台湾での経験を持ち帰る
プログラムに参加した学生たちは、台湾の食を楽しむ機会も持つことができた。フィリピンから来たSoriano Ramirez JarodさんとJian Carlo L. Songcoさんは、台北科技大学で華語の授業を受け、授業が終わると夜市に行って華語の練習をしていたという。彼らは一学期の間に一緒に10ヶ所ほどの夜市を巡った。お気に入りは、うずらの卵の串焼きやシェイクドリンクなどで、牛肉麺の店も食べ歩いたそうだ。
インドから来たTamiliniyaa Rangarejanさんは、金門で牛肉麺や水餃子を食べ、特に気に入ったのは鍋料理だったという。
プログラムの修了式で、部長(大臣)賞を受賞したJonathan Alex Benayaさんは、台北科技大学での華語学習で優秀な成績を収め、華語で次のように挨拶した。「エリート学習プログラムでは、世界各国から来た人々と友人になることができました。台湾での生活を通して台湾が大好きになったので、将来は再び台湾に留学したいと考えています。帰国後はこのプログラムを友人たちに勧めたいと思っているので、今後も継続されることを願っています」と。
修了式が終わった後、外交部の田中光・政務次官は、このプログラムは今後も継続して行ない、しかも協力する学校と参加人数を増やして規模を拡大することを考えていると語った。なぜなら、これらの学生は「台湾での経験」を故郷に持ち帰るからだ。台湾での学習のプロセスで、彼らは台湾が自由で民主的な開放された社会であることをより深く知り、また我が国が世界の政治経済と地域の安定において重要な役割を果たしていることを理解してくれると信じているからである。

エリート育成プログラムの始業式で、金門大学で学ぶこととなったインドネシアの学生と教師、そして田中光・外交部政務次官(右から3人目)。
台北医学大学では茶道文化に触れる機会を設け、静かにお茶を味わった。

国立金門大学ではチャイナドレスを着る活動も行なった。(金門大学提供)

部長(大臣)賞を受賞した学生は、田中光・政務次官から賞状と賞品を授与された。
