かっ飛ばせ! 韓国を逆転
韓国戦を控え、韓国は台湾など眼中に入れていないと噂が流れた。試合前に記者が韓国のキム・ギョンムン監督に戦略を尋ねると、目標は米・日だけと答えたのである。チャイニーズ・タイペイを相手と思っていないことは明らかで、それを聞いた洪一中は大いに憤慨した。
「台湾戦は楽勝だと言われていました」チームを率いて東京に赴いた教育部体育署署長・高俊雄は、洪一中の言葉を聞いたことがある。台湾は外国チームにとって恰好の獲物だというのである。これは洪監督にこの上ない重圧となった。
コーチと選手の人選にも、巷で雑音が聞かれた。海外でプレーする選手は軒並み25歳以下という若さである。「張奕? そんなに若くて大丈夫なの?」韓国戦の先発メンバーにファンはもっと驚いた。高宇杰はオープニングラウンドから一度も出塁がなく打率0。胡金龍も打率は3分しかない。打率2割以上の選手は数少なかった。
しかし、結果的に台湾代表チームには韓国を完封する力があったことが証明され、オーストラリアにも勝ち「世界5強」に返り咲いた。特に洪監督の現場の大胆な判断は、メンバーを信頼し、外部からの圧力に屈することはなかった。「インターネットでついたあだ名『諸葛洪中』も的を射ています」高俊雄署長はのちに洪監督に、このあだ名を否定するなとからかった。自信満々だった韓国がチャイニーズ・タイペイに敗れると、「千葉ショック」の報に韓国は衝撃を受け、チャイニーズ・タイペイの士気はさらに上がった。
プレミア12は、シーズンを終えてすぐ行われ、選手には疲れがたまっていた。台中のオープニングラウンドで、江少慶は鼠径部に違和感があったが「ずっと患部を温めていました。そのプロ意識には頭が下がります」と馮勝賢は振り返る。千葉では大きな試合だから精神的な負担も大きく、あまりの寒さと慣れない人工芝に、先発9人のうち6~7人がこむら返りを起こした。痛みを抑えるために「トウガラシ湿布」を馮勝賢に持ってきてもらう選手もいた。国のために、終盤は気力で踏ん張っていた。