個性のある味
では、どんなものを白醤油というのだろうか。一般の醤油とはどこが違うのだろう。
普通の醤油と同じように、白醤油の醸造も、蒸し煮、冷却、麹作り、発酵、仕込み、加熱といった煩雑な工程を経る。台湾の一般の醤油が黒豆の醤油であるのに対し、白醤油は大豆で作られる。そのため工程の最大の違いは、最後の仕込みだ。一般的に黒豆醤油はたいていが乾燥式で作られる。黒豆を発酵させて菌糸を洗浄した後、塩を加え、甕に入れて発酵させる方法だ。一方、白醤油は一定の水分を加えて仕込み、半年間置いた後、加熱して完成となる。この白醤油の味をさらに調整して再び甕に入れ、発酵した大豆を加えることで、白蔭醤が出来上がる。
黒豆醤油と作り方はほぼ同じだが、実際に味わってみると、白醤油は色、香り、味ともに、大きく異なる。
黒豆醤油が濃い琥珀色をしているのに対し、白醤油の色は薄く、開封した途端、大豆の香りがたつ。また、塩辛さでは普通の醤油とあまり変わらないが、口に入れると甘い味が舌に残る。独特の味わいなので、白醤油の愛好者は永遠にこの味を愛するが、好みでない人は永遠に好きになれない。「味に個性がありますから、好き嫌いが両極端に分かれます」と蕭新旺は言う。
白醤油は、煮込み料理や食卓に置く調味料にも適するが、とりわけ甘みがあるので、魚介類によく合う。
「でも、白醤油の長所は、短所にもなります」と蕭新旺は言う。色が薄いので煮物などに使っても食材の色を悪くしない。だが色の薄さに騙されて味が足りないと思ってしまい、多く加えて塩辛くし過ぎてしまうこともある。消費者からの苦情を受けたことが何度かあるが、詳しく尋ねてみると、たいていは料理の色で判断し、醤油を入れ過ぎていた。
蒸した大豆に種麹を加えて発酵させる。温度が高すぎれば酸味が出てしまい、すべて無駄になってしまう。