近年ゴルフの推進に取り組み、国際的な著名選手を台湾でのプレーに招いているスウィンギングスカートゴルフチームが、再び国内のゴルフ界にサプライズをもたらした。
同チームは全米女子プロゴルフ協会(LPGA)の招請を受け、今年4月、サンフランシスコのレイクマーセッド・ゴルフクラブで「2014スウィンギングスカートLPGAクラシック」を開催することになったのである。LPGA史上初、華人が米国本土で主催するトーナメントである。世界171ヶ国の同時中継が見込まれ、視聴者数は2億4,700億世帯に上ることが期待される。わが国の優秀な選手が世界のひのき舞台に立つ絶好のチャンスになる。
「スマイルクイーン」と呼ばれるヤニ・ツェンの活躍に刺激され、この数年で女子ゴルフは、国内のスポーツ界で広く重視される競技種目になった。以前「サンライズLPGA台湾選手権」を開催したサンライズゴルフ・カントリークラブのほかにもうひとつ、女子ゴルフの強力な推進者がいる。3年連続で巨額を投じ、世界的に活躍する数々のスター選手を台湾に招待して「ワールドレディース・マスターズ」を開催しているスウィンギングスカート・ゴルフチームである。
スウィンギングスカート・ゴルフチームは世界のスター選手をマスターズに招待してきた。右上から順にアニカ・ソレンスタム、ポーラ・クリーマー、そして2013年のマスターズで優勝したリディア・コ。
「世界女子プロゴルフの永遠の女王」といわれる伝説の女子ゴルファー、アニカ・ソレンスタム、全米女子ゴルフ界のアイドル「ピンクパンサー」ことポーラ・クリーマー、2013年世界ランキング1位の韓国出身の女王パク・インビといった世界的なスターゴルファーが、スウィンギングスカートに招かれて台湾でプレーをしてきた。台湾の選手と近距離で競い合う姿が見られるというので、わが国の女子ゴルフ観戦ブームに火がついた。
これらの競技会が評判を呼んだことから、スウィンギングスカートは今年、米LPGAの破格の招請を受けて、4月24~27日にサンフランシスコで「スウィンギングスカートLPGAクラシック」を開催することになった。
台湾からは、全米LPGA会員資格をもつヤニ・ツェン、キャンディー・クン、日本で活躍するテレサ・ルーの出場が決まっている。さらに、LPGAは前例のないノンメンバー選手22名分の出場資格を台湾に与えることとなった。今大会は台湾選手が最も多く出場するLPGAの正式競技になり、わが国の女子トップ選手の世界ランキング上昇とポイント獲得にも役立つと見られる。
では、スウィンギングスカートは誰がスポンサーで、なぜこれほど世界トップクラスの選手を招待できるのだろう。米LPGAの招請を受け、台湾ゴルフ史に新たなページを記すほどなのである。
「50人の情熱を結集すれば、不可能なはずの奇跡が産み出せます」とスウィンギングスカート基金会会長の王政松が笑う。
2010年に設立されたスウィンギングスカート・ゴルフチームは、ゴルフファン50名から成る。大型財団ではなく、事業に成功している中小企業家がいつも一緒にゴルフをしていて、理念を同じくする仲間が集まって設立した基金会だ。
チーム名「スウィンギングスカート」と聞くと若々しいイメージがあるが、これには由来がある。ゴルフはイギリス・スコットランドの高地で生まれたスポーツだが、スコットランド男性の伝統装束はタータンのキルト(スカート状の衣装)である。そこでチームの試合では、男女を問わずスカートを穿き、伝統に敬意を表すとともに、話題と面白みを醸し出している。
洪易は、「美しく成長していく女性」をテーマに各ホールにゲートの装飾を施した。写真は第6ホール「風雨の後」でプレーする韓国のチェ・ナヨン。
性別の壁を打破した勇気あるゴルファーは、ひょんなことから国内女子ゴルフの重要な推進役を担うことになった。
その鍵は、スウィンギングスカート基金会会長・王政松である。師範大学美術学部を卒業した王は、長年美術品のコレクター・美術商として販売を手がけ、文化の豊かさを大切にしてきた。王と妻の邱鳳玉は大のゴルフ好きで、台湾のゴルフ界に貢献したいと考えていた。
そうした中、2011年、邱鳳玉は台湾女子プロゴルフ協会(TLPGA)のコーチから、台湾から世界の女王ヤニ・ツェンが出たものの、国内女子ゴルフは競技の開催数も賞金規模も海外とは大きな落差があり、選手の質を向上させるのが極めて難しいという話を聞いた。
そこでスウィンギングスカートのメンバーと話し合い、共同でTLPGAに寄付金を出すことにした。前例を超えて賞金金額が1千万元以上の女子ゴルフ大会を開催することを目標に据えた。
しかし豪語したはいいが、彼ら素人はプロの競技会開催の難しさを知らなかった。賞金の準備に加え、会場手配、チケット販売、指定宿泊先、送迎手配、メディア宣伝、スポンサー探しなど、煩雑な支出と事務があった。
また、高額賞金を出すからには、それなりのレベルの選手が出場しなければ話題にならない。台湾のトップ選手だけでは明らかに不十分なので、外国人選手の魅力に頼らねばならない。だがスウィンギングスカートは民間団体で、オフィシャル団体のバックアップも知名度もない。LPGAの公認大会でもないから、選手の招請は困難を極めた。
「最初は招待状を送っても、なしのつぶてでした。エントリー・フィーを巻き上げる詐欺グループではないかと疑われたこともあります」と王は苦笑する。
そこで何とかしてスター選手に台湾に来てもらうために、賞金総額を100万米ドルに引き上げ、更に著名選手には「出場料」を支払うことにして、参加意欲増大を働きかけた。さらに、あらゆるコネクションを利用して日本や韓国の女子プロゴルフ協会や世界最大のゴルフマネジメント会社のIMG (International Management Group)などオフィシャル団体や民間組織に協力を求めた。
それに加え、スウィンギングスカート・チャリティートーナメントで初めてスカートを穿いてプレーをしたヤニ・ツェンが、国際大会に参加するたびに、繰返しスウィンギングスカートを宣伝して知名度を高めたことが功を奏して、なんとか海外の選手も台湾での大会参加に意欲を示すようになっていったのである。
半年にわたる努力を経て、2011年、スウィンギングスカートが初めて主催する「女子ゴルフ国際招待トーナメント」に、世界ランキングトップ10のスター選手が多数出場することになった。これが世間をあっと驚かせ、台湾ゴルフ国際競技史上の新記録も打立て、ゴルフファン数万人を林口ミラマー・ゴルフクラブに呼び込んだ。
スウィンギングスカートの大会規模と選手の顔ぶれは、国際の一流水準に引けを取らない。
スウィンギングスカート・ゴルフチームは世界のスター選手をマスターズに招待してきた。右上から順にアニカ・ソレンスタム、ポーラ・クリーマー、そして2013年のマスターズで優勝したリディア・コ。
これに加え、ビジネスで美術品を扱う王政松は、準備費用2億元を超えるこの大会に、これまでにないアートの息吹を添えた。中華文化の古城の城門に倣って、ホールごとに関門を設置し、1番ホールの「痴情関(愛情の関)」から、2番ホール「畏避関(畏れの関)」、3番ホール「驕吝関(おごりと強欲の関)」、最後の「生死関」まで、18ホールを人生の18関門に喩えた。文化的な色彩と哲学的理念に富んだデザインが、世界の荒波に揉まれるトップ選手の共鳴を呼んだ。
初の開催で高い評価を得ると、翌年からはスウィンギングスカートの選手招待は楽になった。また、現在世界が最強と公認する韓国との協力によって、スウィンギングスカート主催の「ワールドレディース・マスターズ」が韓国女子プロゴルフツアー(KLPGT)の公式戦にも組み込まれた。
2013年のマスターズでは、スウィンギングスカートは国内の著名アーティスト洪易に依頼し、「女大十八変(成長に連れて美しくなる女性の変化)」をテーマに、各ホールにインスタレーションアートを設置した。コースを進んでいく試練を、少女が数々の試練を乗り越えて成長していき、大らかに未来の人生を迎える様に、象徴的に喩えている。
「ゴルフは台湾で最も世界のトップに近いスポーツです」と王政松は言う。スウィンギングスカートが競技開催に資金と労力を注ぐのには、商業的な目的があるに違いないと見る向きも多い。だが彼らは、純粋に楽しみを分かち合い、国内のゴルフファンにより多くの素晴らしい試合を見てもらいたいと願っているだけなのだという。そして、試合と選手へのスポンサーシップを通じて、台湾にもっと多くのヤニ・ツェンが育ち、ゴルフの層を厚くして競争力をつけてほしいと期待する。
アメリカへ赴き、大会の開催準備をするスウィンギングスカートは、全米LPGAと台湾のゴルフ史を書き換えた。熱血ゴルフファンの情熱と愚直さが、わが国のゴルフの実力が近年見せた大きな成長ぶりを世界に示そうとしている。より多くの台湾選手が、ふるさとの国の人が一手に創り上げた大会の舞台で光り輝いてくれることを期待したい。
ゴルフを愛する中小企業経営者たちが結成したスウィンギングスカート・ゴルフチームは男女そろってスカート(男性はキルト)でプレーする。若さと伝統への敬意を表している。
スウィンギングスカート・ゴルフチームは世界のスター選手をマスターズに招待してきた。右上から順にアニカ・ソレンスタム、ポーラ・クリーマー、そして2013年のマスターズで優勝したリディア・コ。
台湾の著名アーティスト洪易が2013年のスウィンギングスカート・ワールドレディース・マスターズのために用意した色鮮やかな作品。写真はその作品「福龍」とドイツのサンドラ・ガル。