8,000メートル級の超人
8,000メートル級の高峰を何度も制覇した呂忠翰さんは、2022年に世界第3の高峰、ヒマラヤにあるカンチェンジュンガの無酸素登頂に成功し、台湾人としての史上初記録を打ち立てた。しかしそれには取り戻せない代償が伴った。「だから去年、登山家活動にピリオドを打った」と黒くなった指を見せ、きっぱりと「凍傷は二度とごめんだ」と言った。
アタックの前に高山への体慣らしが足りなかったことから、酸素が不足し、記憶が飛んでしまうという酩酊状態に似た状況に陥った。8,000 メートルまで下山すると、再度記憶を失った。体が極限状態に陥って、その日は一晩中、意識がもうろうとしていたという。呂忠翰さんは「8時間あまり、自分が何をしていたかわからない」と語る。
撮影クルーは無酸素で8,000メートルの高山を登るヒーロー、台湾山岳界のレジェンドを見つめた。『マウンテンズ』は無酸素登頂に挑戦する呂忠翰さんを忠実に記録し、その探検教育に対する理念を伝えてくれる。監督はそのメイキングで「玉山東峰の東北稜のあのシーンは、すべてのストーリーの軸となった」と断言した。台湾十峰で最も険峻な東峰に監督は自ら登り、一人分の幅もない、一度踏み外すと断崖絶壁に落ちそうな尾根を歩いた。「あれは人生で最も恐怖に近づいた瞬間だった」。
李さんはためいきの入江に再び足を踏み入れた。それは自らを振り返る旅でもあった。