アミ族の伝統食を残す
故郷に残ったのにはもう一つ理由がある。「アミ族文化を深く知りたくて、アミ文化にどっぷりつかって学びたいと思いました。そのためには集落にいないと」と言う。有機米栽培のほかに、黄さんは祖母からシラウの作り方を学んだ。シラウとは生の豚肉の塩漬けで、原住民料理に欠かせない保存食だ。昔は冷蔵庫もなく、豚は大切な出来事のある日にしか殺さないので保存した。保存方法にも家ごとにこだわりのやり方があった。
地域によって加える材料も異なる。黄瀚さんによれば、池上、関山、鹿野といった花東縦谷のアミ族の場合は少し特別で、豚肉を2回発酵させておいて、その後に米やモチ米を炊いて加えるという。ご飯の糊化した澱粉と肉の酵素とが混じって乳酸菌を作るのでわずかな酸味があり、まるでイベリコ豚の生ハムのような味がする。
2024年夏に東海岸の南竹湖集落の若者たちと連絡を取り、東海岸のシラウを調べた。「東海岸では酒粕を加えるので、長く置くほど香りが増し、少し紹興酒の香りがします」
黄瀚さんは祖母からシラウの作り方を習った。家ごとに作り方が異なり、地区によって材料も違うという。例えば花東縦谷の池上、関山、鹿野などでは炊いたご飯を加えて発酵させるし、東海岸では酒粕を用いる。