文化への関心と塩埕旧市街の復活
海は百川を入れる大きさがあるが、都市の偉大さもその包容力にある。包容力により都市は共通の歴史的記憶を紡ぎ出し、港湾都市・高雄の文化の基礎を作り上げる。
移民が高雄の都市の性格を決めた。高雄への移民は哈瑪星と塩埕一帯から始まった。
塩埕区は哈瑪星に次いで高雄で最も早くに開発された地域で、崛江周辺は碁盤の目のように旧市街が交差している。老舗の喫茶店を見つけ、古くからの老舗のご主人たちに高雄と港湾の歴史盛衰を尋ねてみた。船の解体業や既製服などの経営者は古い業種から新しい業種への移り変りを話してくれたが、これが現在の文化園区に恰好の題材を提供している。
五福四路にある参捌旅居の前身は1959年創設の正美礼服公司で、現在は三代目の邱承漢が経営している。彼は3年前に台北から高雄に戻り、母方の祖母の店を大幅に改造した。文化的要素を設計に取り入れ、かつて最も賑わっていた塩埕の大通りの目立たない外観の店は、センスある若い世代に人気となった。
ある日、参捌旅居の二階で邱承漢はもう一人の高雄出身者謝一麟と新しい年度の計画を練っていた。謝一麟は哈瑪星打狗文史再興会社の顧問で、三余書店の責任者の一人である。
三余書店は高雄を東西に貫く幹線の中正路に位置する。地下にはMRTオレンジ線が走り、地表には高層ビルが立ち並ぶ。三余書店はその狭間、ビルの傍らの古い家屋に目立たなく身をひそめているが、周囲と奇妙なバランスを維持している。それは書店の持つ柔らかい雰囲気が、温かく周囲を包むからであろう。
設立2年足らずだが、三余書店は高雄の独立系書店としてのソフトパワーで、知名度の高い空間となっている。書店として、読者に快適な本を選び、講演を聞く場を提供する。
古い倉庫の並ぶ駁二地区が芸術文化とクリエイティブ産業の基地に生まれ変わった。