竹が作るランドマーク
「木馬古道」の終点は静寂エリアの「風の舞台」だ。高台になっているここからは嘉南雲峰と台湾最高峰·玉山の雄大な景色を眺めることができる。
近くにある「明陣」は歩いて瞑想するのにうってつけだ。足元に埋め込んだ石を目印にして進む。通路は二重螺旋になっているので入る者と出る者がぶつかることはない。形はシンプルだが、動線は理にかなっており、ゆっくり歩くことで心を静めることもできるし、グループセラピーにも使える。
竹創森園区の一番奥にあるのは稜線の端に位置する「穹頂竹棚」だ。孟宗竹を組んで作った3層の曲面によるシェル構造で、幅18メートルで3つの開口部を持つが、山から受ける風圧にも耐えることができる。内側の竹組みはまるで織物のようで、銅板に覆われた屋根は時間の経過とともに明るい赤銅色から深い褐色、さらに灰緑色へと変化し、環境との調和を表している。
「シェル構造は通常、コンクリートや鉄鋼を使い、竹材のものはめったにありません。ここを訪れた世界竹協会(WBO)のメンバーもびっくりしていましたよ」と甘銘源は自慢げに言う。
またボウルのような造型に竹や銅などの自然素材を使うことで音を和らげる効果を生み出しており、ここではゴングを用いたサウンドメディテーション「Gong Bath(ゴング・バス)」の体験もできる。ゴングを壁際と中央に設置し、鳴らした音を反響させ合うことで、さまざまな効果が得られるそうで、中国医学界では旋律の変化がないゴングの音には、神経をリラックスさせる効果があると考えられている。
「穹頂竹棚」の隣にある「小柴軒」はユニークな公衆トイレだ。杉の間伐材を薪積みのように積み上げて壁を作り、まるで小さな庭のような設計の個室は、半露天で空が見える構造になっており、トイレを使用する際にも戸外の景色を楽しむことができる。
山々の美しさを感じることができるトイレを作りたかったのだと甘銘源は語る。「『身も心も解放される』とはまさにこのことです。体が教えてくれますよ、『ああ、気持ちいい!』って」
公衆トイレ「小柴軒」は半露天設計になっており、大自然の中で用を足しているような気分が味わえる。(大蔵規画設計公司提供、羅慕昕撮影)