独自のミクロ経済を
台湾東部に位置し、美しい景観と豊かな物産に恵まれた台東だが、地域の経済はなかなか躍進できずにいた。
台東の地域おこしに取り組む「津和堂城郷創意顧問」のCEOであり、台東スローフード‧フェスティバルを主催する郭麗津さんは10年余り前を思い出す。当時、政府は台東の観光産業発展のため、健康レジャー産業パーク建設を企画していた。だが郭さんの調査で需給不足がわかり、たとえBOT方式(民間が建設‧運営、その後行政移管)にしても失敗するという結論に達した。
ただ、第二の人生や起業のためにと台東に引っ越してくる人は多く、台東の環境の良さは疑いなかった。そこでロハスやウェルネスがトレンドの今ならと考えた。「壁のないパークは作れないだろうか。地元の小規模店を結びつけ、それぞれの特色や専門性を育て、それらを統括したマーケティングを行う。産業育成をサポートすれば、新たな方向が見つかるかもしれない」と。
台東県の支援を受け、花東縱谷にある池上、関山、玉里、富里をモデル地区に選び、「食」を焦点に地元のミクロ産業の連携に着手した。まず地元にどのようなリソースがあるかチェックし、コミュニケーションを重ねながら「人」による有機的なつながりを作る。また商店にグレードアップの提案や指導を行うとともに、経営者側からの提案も促す。「大企業の大規模投資は雇用を生む一方、仕事が非人間的になり、人が『疎外』されてしまいがちです。反対に我々は経営者に寄り添い、それぞれの自分らしさを大切にします」
こうした関わりは、やがて地元に刺激を与え、多くの人を巻き込み、その心を動かしていった。郭さんも慌ただしい台北を2013年に離れ、台東に「津和堂」を設立、自身も地元住民となった。
台東スローフード‧フェスティバルには、これまで延べ10万人近くが訪れている。