6月、国際鳥類連盟が発表した最新の「アジア鳥類レッドデータブック」では、南台湾においてクロツラヘラサギの保護が成果をあげた結果、数が増加して、絶滅危険度1級から2級に下がったことが報告された。実は2年前にも、ミカドキジ、サンケイ、タイワンシジュウカラ、ミヤマテッケイなど4種類の台湾固有種が、「絶滅の恐れのある鳥類」のリストから除名されている。
それ以外の希少鳥類はそれほど増加したとは言えないながらも、近年のバードウォッチング・ブームや生態意識の高まり、各地での保護活動などによって、鳥類を取り巻く環境は明らかに改善されている。
例えば雲林地方のヤイロチョウを見ると、地元の湖本村は土砂採掘という危機にさらされながらも、尹伶瑛村長によるヤイロチョウ保護の呼びかけのもと、地元や他地域からも支援が寄せられ、農業委員会が湖本村の一部地区をヤイロチョウ生息地として指定する方向に動き始めた。現在では、移動性を持つヤイロチョウは、毎年湖本村に戻ってくるだけでなく、さらに八卦山麓や彰化市街地、員林鎮の方にまで出現する姿が見られるようになったのである。
6月8日、台湾の鳥類観察に訪れた国際鳥類連盟のリチャード・トーマス博士は、10日間に及ぶ視察旅行を終えて「台湾では鳥類保護団体も政府も、生態保護を十分に重視していることがわかりました」と語った。確かに、最近の鳥類保護の成功は、各地に分散する野鳥学会によるところが大きい。台南地方で菱の実の育つ池によく見られるレンカクも、野鳥学会の会員によって保護が成功した例である。
商工業の発展に伴い湿地帯が減少し、レンカクの生息地も、今では台南県官田郷に広がる菱の実の池に限られるようになってしまった。ところがその湿地帯に、計画中の高速鉄道が走る予定となった。このレンカクの危機に対し、台南野鳥学会や湿地連盟などの団体が立ちあがり、「レンカクを救え」のかけ声は全国に広まっていったのである。その結果、ついに高速鉄道局は、15ヘクタールの湿地をレンカクのために残すことを承諾した。
ほかにも、6月初旬に新竹市がゴミ埋立て場や工業地区を新たに計画したのに伴い、農業委員会は「客雅渓河口及び香山湿地野生動物生息環境保護区」を制定した。これによって、274種以上の鳥類が生息する香山湿地は、なんとか危機を逃れたのである。
地理的条件に恵まれた台湾には、400種以上の鳥類が生息し、そのうち15種が固有種である。国際鳥類連盟のトーマス博士も、台湾を訪れた一番の収穫は台湾固有種を14種も目撃できたことだと、嬉しそうに語っている。鳥類は台湾の貴重な資源と言えるが、野鳥学会は国内での保護に努めるだけでなく、海外との協力にも力を尽くしている。
国際鳥類連盟が今年出版した「世界で脅威にさらされている鳥類リスト」を見ると、世界では鳥類の8種に1種が脅威にさらされ、それらは今後100年以内に絶滅するだろうと予測されている。また、過去200年間にすでに103種が絶滅しており、2010年までに460種が姿を消す恐れがあるとも書かれている。
地球上の1100種余りに及ぶ鳥類が脅威にさらされている主な原因は、人類の経済発展や資源の高度開発だ。とりわけ地球の温暖化、海洋汚染などの公害が鳥類の生存を脅かしている。このため鳥類保護を成功させるには、国際的な協力が不可欠なのである。
中華民国野鳥学会は、世界の鳥類団体との連携を図ろうと、農業委員会による賛助のもと今年6月より、国際鳥類連盟との協力で、「e-Birds:世界で野鳥保護を推進しよう」というネット上での一連のイベントを開始した。野鳥保護ウェッブサイト・デザイン・コンテストや、野鳥保護・児童デジタルペインティング・コンテストなどを開催して各国から参加を募ったり、台湾におけるクロツラヘラサギの生態保護やレンカクの生息地再建などの成果をホームページで展示している。