台南市沙淘宮前の鄭家菜食ちまき
午前5時半、台南の中西区にある沙淘宮の前に位置する「鄭家菜食ちまき」では、店主一家3名が協力して客を出迎える。ちまきの葉をはがし、特製のタレをかけ、ゴマ油をたらし、細かく刻んだ香菜(シャンサイ)を散らし、そして味噌汁を客に出す。てきぱきした動きは一気呵成になされる。
「鄭家菜食ちまき」は、廟の前にあるガジュマルの木の下で74年間営業してきたそうだ。2代目店主の鄭世南によると、この家業は父親から受け継いだもので、創業当初は肉ちまきと菜食ちまきを販売していたが、現在は「菜食ちまき」一品のみを販売しているそうだ。
菜食ちまきは、もち米と落花生だけで作られ、ゲットウ(月桃)の葉で包まれる。落花生の粉は加えない。女将の呉珮瑧によれば、落花生の粉でゲットウの葉の香りが損なわれないようにするためだそうだ。鄭世男によれば、ゲットウの葉は伝統的な笹の葉よりも厚く、葉を洗ってから、一度茹でて柔らかくしなければならないとのことだ。「うちのちまきは、一晩かけて茹でるんです。夜10時から翌朝4時までずっと茹でるのですが、落花生に火が通り、ゲットウの葉と落花生の香りが混ざり合うまで5時間は茹でないと」と言う。
鄭世南は、沙淘宮の向かいにある建物を指差しながら、「昔、あそこに台南で一番大きな野菜市場があったんです。うちの開業当初のお客さんは、向かいの野菜売りたちでした。深夜零時くらいに市場にやって来て、明け方3時か4時まで商売をすれば、お腹も空いてきます。ですから父は明け方3時に売り始め、7時には商売を終えていました」と、あまり知られていない歴史の一端を教えてくれた。
3代目の鄭沛晴も店を手伝っていて、将来は家業を継ぐつもりでいるという。台南グルメが継承されるというわけだ。喜ばしい事この上ない。
この皿の全ての食材に人工防腐剤が使われていないため、消費者は安心して食べられる。